このように、スーチー氏の父親は日本と非常に密接な関係にあった人であり、また、スーチー氏自身も民主化運動によって軍事政権下で軟禁され、ノーベル平和賞も受賞していることで、日本でも世界的な民主活動家として、彼女に親近感を抱いている人も少なく無いでしょう。
現在のミャンマーは、中国の経済支援もあって親中派です。11月初旬にマレーシアで開かれたASEAN拡大国防相会議でも、ミャンマーなどの親中国が中国側につき、南シナ海をめぐる文言で揉めたため、共同宣言が出されないという異常事態が起きました。
スーチー氏の率いるNLDによる政権交代が起こることで、ミャンマーが親中国姿勢から転換するのではないか、とくに民主活動家であったスーチー氏だから中国に厳しい態度を取るのではないか、と期待する人もいます。しかし、それは期待外れに終わる可能性が高いでしょう。
というのも、今年6月にスーチー氏は中国を訪問しました。このとき、中国の人権派、民主活動家などは、スーチー氏が中国政府に対して、中国の人権環境の改善を訴えるのではないかと期待していました。
[参照]民主・人権派の期待高まる=訪中のスー・チー氏を歓迎-中国
しかし結局、スーチー氏はまったく人権問題に触れることはありませんでした。これに対して、内外から大きな失望が起こりました。政権交代を目の前にして、中国の経済的支援を取りつけるために、現実路線に走ったと言われています。中国のほうとしても、スーチー氏を取り込んでおこうという思惑で、大歓迎しました。
[参照]【一筆多論】スー・チー氏は「リアリスト」か 宇都宮尚志