不慮の事故で意識不明になった男性には離婚した元妻と未成年の子どもがいました。子どもに相続をさせたいけれど、元妻には財産には触れてほしくない場合はどうしたらいいのか。そして、葬儀費用を故人の生命保険から捻出することは可能なのか? 無料メルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』で現役弁護士が回答しています。
葬儀費用を生命保険から出すことは可能?
■相談
親戚の出来事で相談です。未成年の子供(親権は元嫁)が1人いる、離婚した若夫婦がいます。
夫が交通事故で意識不明の状態が続いています(おそらく近日中に亡くなってしまいます)。不動産・預金・生命保険は第一相続人である未成年の子供が相続になると思います。また、葬儀の喪主は夫の父親がなる予定です。
ただ、お金に余裕がなく葬儀費用を夫の生命保険でまかないたいと考えているのですが可能でしょうか? 子供は未成年なので代理人の元嫁との話し合いで、元嫁が了解することが条件でしょうか? 元嫁が非常にしたたかな女性なので簡単に首を縦に振ってくれない場合は、何かよい手立てはないでしょうか? (30代:男性)
■回答
まず、相続の問題と生命保険の問題は切り分けて考えなければなりません。
相続については、ご相談内容から、ご親戚の方(夫)が亡くなられた場合、離婚されているため、相続人は、未成年のお子様のみとなります(民法887条参照)。離婚後は、元奥様に相続の権利は生じません。
相続が発生すると、故人(被相続人)に生じていた権利義務のすべてが相続人に引き継がれることになります(民法896条)。したがって、ご親戚の方が有していた不動産や預金はもちろんのこと、住宅ローンなどの借金があれば、場合によってはそれも引き継ぐことになります。
一方、生命保険は、あくまで死亡をきっかけに、あらかじめ指定していた保険金の受取人に対して金銭が支払われる「保険契約」になります。
したがって、相続とは関係なく、受取人に対してお金が支払われることになります。受取人が元奥様か、未成年のお子様かはご相談内容からはわかりませんが、相続の対象とはならないだろうことはご注意ください。
葬儀費用を生命保険から出したいということですが、受取人が元奥様の場合は、奥様に打診して支払ってもらうようにする必要があります。
一方、未成年のお子様が受取人の場合、葬儀費用の支払いは法律行為(いわゆる契約)にあたりますので、法定代理人である元奥様の了承が必要になると思われます(民法824条)。
いずれにせよ、事情を話したうえで元奥様に協力を仰ぐのは必要ではないかと思われます。
ただ、次に述べる「特別代理人」というしくみを使えば、葬儀費用の捻出と適切な相続財産の管理が両立できると考えられます。