4月に不正会計問題が発覚した東芝ですが、現在の経営状態はどうなのでしょうか。『ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座』著者の安部徹也さんの見立ては「瀕死の状態ではない」とのことですが……。
不適切会計で揺れる東芝の経営を財務の視点から分析する
さて、前回はワタミの財務分析をお届けしましたが、たいへん大きな反響をいただきました。ご感想をいただいた中に、次回は是非とも東芝の今後についても財務分析の観点から検証していただきたいというご意見がありましたので、今回はご要望に応えまして東芝の財務分析を行っていきたいと思います。
東芝は、みなさんもご存知のように今年の4月に不適切会計が発覚し、現在「東芝ブランド」に対する信頼が大きく揺らいでいます。この不祥事が事業、そして財務にどのような影響を与えているのか? 最新の決算短信から検証を行っていきましょう。
東芝のキャッシュの水準をチェックする
まずは企業の事業活動に欠かすことのできないキャッシュの水準から見ていきましょう。
東芝の直近の現預金残高は2015年6月30日時点で、2,055億円です。これだけでは現預金残高の水準が高いか低いかわかりませんので、比較を行ってみます。
たとえば、東芝の昨年度の売上高は6兆6千億円ですから、月商に直すと5,500億円です。つまり、東芝は現状売上の0.37ヶ月分の現金残高しかないということになります。
他社との比較で見ていくと、同業種のシャープは年商2兆8千億円と東芝の半分以下の規模ですが、2015年6月30日時点では、2,143億円と東芝を上回る現預金残高となっています。また、日立は年商が9兆8千億円で2015年6月30日現在の現預金残高は6,900億円なので、売上の0.85ヶ月分に相当する現預金を保有しているということになります。
このように比較分析を行うと、東芝の現預金残高の少なさが際立つ格好となります。