少子高齢化が深刻化して久しい我が国ですが、同じ悩みを抱えていたロシアがその問題を解決しつつあります。いったいどのような方法を取ったのでしょうか。国際関係アナリストの北野幸伯さんが無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で詳しく記しています。
少子化問題が解決されつつあるロシア
私がメルマガをはじめた1999年、ロシアの人口は「年間70万人」という超スピードで減少していました。「このままだとロシアは消滅する」と、マジメに心配している学者さんもたくさんいたのです。
1999年、ロシアの合計特殊出生率は、なんと1.17(!)だった。それがですよ、2012年は1.7、2013年も1.7。死亡率の低下も手伝って、人口が「自然増」しはじめている。
ロシアの出生率 記録更新
2015年6月19日 Sputnik日本
ロシア保健省は、ロシアの2014年の出生率が、過去最高となったと発表した。
2013年の出生率は、1990年代以降初めて死亡率を越えたが、2014年はさらによい結果が出た。
自然増加数は3万3,600人で、死亡率も低下している。
ロシアでは2014年、出生率が前年比0.8パーセント増となり、出生数は192万9700人から194万7300人となった。
これは、新生ロシア史上、最高値だ。
「少子化問題」に苦しむ日本としては、「どうやって出生率増やしたの????」ときいてみたいですね。
「母親資本」とは?
ロシアで少子化問題が解決されつつある。人口が「自然増」に転じている。
なぜ?
その秘密の1つが、「母親資本」(マテリンスキー・カピタル)という制度です。「母親資本」とはなんでしょうか?
要は、「子供を2人産んだ家族は、大金がもらえる」という制度。導入されたのは07年ですが、当時「平均年収の2倍分もらえる」という話だった。日本の感覚でいうと、「子供2人産んだら800万円もらえる」という感じでしょうね。
しかし、もらうお金の「用途」が決まっている。主に、
・住宅関係(住宅の購入、修繕など)
・教育関係(子供の教育費)
2015年度の「母親資本額」を見ると、45万ルーブルでした。これって、日本円で「90万円」程度です。
「90万円もらえるのなら、子供2人産むわ!」
日本人の感覚では、ちょっと想像できないですね。それで私は長年、「母親資本」なんて効いてないと思っていた。しかし、実際出生率は上がっているわけで、「なんなんだろう?」と疑問に思っていたのです。
ところが最近、「モスクワから300キロ離れたところに家を買った」という人に会い、考えが変わりました。「300キロ」というとめちゃくちゃ遠く感じますが、ロシアは国土が広大。日本人の「300キロ」とは感覚が違います。
「で、いくらしたの?」と私は聞きました。「40万ルーブル」(80万円!!!)
この会話で私は「悟った」のです。
「そうか、母親資本90万円は、田舎の人にとって大金なんだ。それで『家が買えるほど』の」
要するに「2人子供を産むと、家を買える」から、出生率が増えている。もちろん「母親資本」が唯一の理由とはいいません。しかし、これが「大きな動機」になっていることは間違いないのです。
「少子化問題は●で解決できる」
●の答えは、「家」です。