先日、国境なき医師団の病院を誤爆し大きな問題となったアフガニスタンの米軍ですが、その内部でタリバンを勢いづかせるモラル崩壊が起こっていると、静岡県立大学グローバル地域センター特任助教の西恭之さんは、メルマガ『NEWSを疑え!』で明かしています。にわかには信じがたい事態、深刻です。
タリバンを勢いづかせた米軍のモラル崩壊
アフガニスタンの政府側民兵や警察の指揮官には、少年を性奴隷としている者が少なくない。この犯罪を止めようとした米軍人を、米陸軍と米海兵隊が処罰していることが明らかになり、米議会などで議論を呼んでいる。
これら処罰された米軍人の上官は、少年の奴隷制を「現地の文化」として、見て見ぬふりをすることを口頭で、つまり命令について誰も責任を問われない形で、部下に求めた。しかし、旧タリバン政権は少年の奴隷制の禁止を徹底しており、このモラルの退廃を黙認する米軍側の姿勢が住民をタリバン側へなびかせる結果となった。
この現実から明らかになるのは、住民との争いを避けるためではなく、アフガン撤退を急ぐオバマ政権の顔色を伺う米軍上層部の事なかれ主義である。米陸軍・海兵隊の将官や大佐の間に蔓延しているのは、米軍の徳目に従って現地住民も支持するような行動をした軍人を守ることよりも、自分の昇進を優先する傾向である。
2012年8月10日、アフガン南部のヘルマンド州のデリー駐屯地で、15歳の少年が丸腰の米海兵隊員を銃撃して3人を殺害、1人に重傷を負わせた。少年はガルムシル警察署のサルワル・ジャン署長が駐屯地へ連れ込んだ9人の「使用人」の1人だったが、その犯行声明はタリバンから出された。
死亡した海兵隊員の1人は米国の父に、「(性的虐待を受ける)少年たちの悲鳴が毎晩のように聞こえるが、上官は『彼らの文化だから見て見ぬふりをするしかない』としか言わない」と懸念を訴えていた。
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