伝説の暗黒プロデューサー康芳夫、降臨。マフィアに殺されかけた猪木アリ戦ほか、昭和のウラ歴史を激白

 

-そしてそんな現代、「世を睥睨(へいげい)するスフィンクス」としてのお立場からの思考の中、メルマガともう一つ、俳優業を開始されました。その理由は?

 俳優業はね、これはもうマスコミに何度も言ってますが、大島(渚)、若松(孝二)、大学が一緒だった久世(光彦)君とかね、彼らが盛んにオレに「俳優になれ」と。だけど、僕は「どうせロクなことはない」と思って、断ってきたわけ。

-皆さん、なぜ康さんをそんなに誘われたんでしょう?

 それは、オレにそういう綜合的素質があると思ったからでしょう。でも、そのうちに時間が経っちゃって。ただ、「俳優をやってみてもいい」というポテンシャルは、そういう大島や若松、久世の問題があったから、意識には常に残っていました。

-勝新太郎さんからも、「役者になれ」と。

 もちろん。まあ、勝ちゃんの場合は冗談半分だけど「お前、やれよ」座頭市に出ろよと。そういう意味ではテシ(勅使河原宏監督)にも誘われました。

-勅使河原監督作品で康さんを観たかったです。

 具体的に言うと、「燃えつきた地図」(安部公房原作/1968年)ですよ。あれは勝ちゃん主演で、オレと勝ちゃんの付き合いもそれ以来。これは余談になるけど、勅使河原がなぜ、事件の時に法廷で勝ちゃんを擁護したかというとね、この作品で彼らには切っても切れない縁があったわけ。みんな、「なぜテシが勝ちゃんを」って不思議に思ったし、勝ちゃんも妙なインテリ・コンプレックスみたいのがあって、「勅使河原に拾われた」というのは、彼としても非常に嬉しいことだった。そんな縁もつくった、「燃えつきた地図」は原作もすごいし、非常に面白い映画ですね。

-康さんを改めて映画界に引き込んだのは、「渇き。」の中島(哲也)監督でした。

 彼はまずオレに「出てくれ」という手紙をよこして、それはタイミングも良かったし、ちょうど他にやることもなかったから。それで、彼に会ったらなかなか面白い人だということがわかったのでOKして、出たわけだよね。「渇き。」自体は、彼の他の作品に比べてもう一つ盛り上がらなかった部分もあって、それは残念だったけど、彼は本当は「進撃の巨人」をやることになってたの。それが東宝とトラブッちゃって降りちゃった。だからそれが実現してたら、オレも「進撃の巨人」に出てたかもしれない(笑)。そういうことで、僕は、潜在的に「俳優をやってみよう」という気持ちがなかったわけではないので、そこに中島監督が火をつけてくれて、「これは転機だ」と思ってね。そして第2作目が内藤誠監督の「酒中日記」(坪内祐三原作 小説現代連載中/3月21日 テアトル新宿 4/3まで21時~22時45分 公開)です。そして今度は、熊切(和嘉監督)君が「家畜人ヤプー」をやりたいと4年前から僕のところに来ているから。

-そこで、「家畜人ヤプー」の話になっていきます。諸々、最近の康さんの展開を拝見していて深読みすると、すべてはヤプーの映画化とその実現に向けた道筋づくりに集約されていくのかなと。

 密接に繋がっていきます。この間も、熊切君の出世作「鬼畜大宴会」(1998年)を改めて観たんですが、彼は十分にヤプーを映画化する素質を持っています。ただお金の問題はあって、今彼はパリに居ますけど、いずれにしても家畜人ヤプーとはかぎらず「私の作品に出てください」ということは、言われている。それもオレは出るつもりでいるし、俳優としても「オレの真価を問うてやる」と(笑)。

-「ヤプー」はどこまで進んでいますか?

 熊切君の話は大型予算で、数億のカネでやろうと思っている。そこにね、今、葉山陽一郎君という、日大芸術学部出のAVとかVシネマを撮る典型的な低予算映画を撮るベテラン監督が、急に「是非やらせてくれ」と申込んできた。それは僕もOKして、まずは低予算映画として一度実現させると。熊切君も「やってもらって結構です」と言ってくれてるんで、これは現実に、今年中に実現します。葉山君はね、「THE OSHIMA GANG」(2010年)という映画をつくったわけ。これは大島渚のドキュメントで、なかなか面白い。当時大問題になった。あと、「サル」(2003年)って非常に不気味な映画も撮っていてね、これは麿(赤児)の息子、大森南朋が主演してる。

休みの日は宇宙の果てを考える

-諸々楽しみです。ところで、今も企画が山積みでお忙しそうな康さんですが、お休みの日は何をされていますか?

 休みの日は寝て、宇宙の果てを考えていますね。

-何をされている時に一番幸せを感じますか?

 宇宙の果てが何かを考えています。究極の宇宙物理学、哲学の世界。僕には宇宙物理学の專門知識はないが、「哲学」がある。ホーキングもぶったまげる発表をするよ。

-ストレスはどのように解消されていますか?というか、そもそもストレスというものが、おありなんでしょうか?(笑)

 ただ寝てるだけ。ストレスはあんまりないね。

-また、最近の話題としては、やはり画家の金子國義さんが逝去されました。康さんとも親しくされていた金子さんですが、日本の美術界において、どのような存在でしたか?

 金子の最大の問題点は、彼が世に出たのは、今から約45年前、三島(由起夫)と澁澤(龍彦)が認めて、澁澤の本の表紙とかほとんど彼がやっていた。でもそれが美術評論家の反論をかっちゃって、それは三島も澁澤も文芸評論家であって、美術評論家じゃないよね。だから、死ぬまで美術界では彼は非常に不遇だった。それは例えば、横尾(忠則)君がグラフィック・デザイナーから絵描きに転換した時も、非常に冷たい眼で見られた。今やっと少し緩和されたけど、でも、美術評論家はあまり評価してない。そして金子君の、絵に関しても評論家は非常に厳しい見方をして、彼はその点について非常に欲求不満を持ってたんだけど、それが解消されないうちに亡くなっちゃった。彼とは放蕩無頼の生活を50年間共にして、新宿2丁目ゲイバーが二、三軒がオープンした頃、売春宿が終わった直後、西部開拓史ですよ。お互いに20代から、それが今や2丁目は世界的なゲイタウンになったけど(笑)。

-例えば、一緒に時代を過ごされた赤塚不二夫さん、若松孝二監督、赤瀬川原平さん、金子國義さんが逝去されました。時代の流れを感じますか?

 そうですね。唐(十郎)くらいだな、残ってるのは。昨日は金子の通夜だったんだけど、佐野史郎君も来たし、唐は病気で弔電うってきて、色んな人が来てたんだけど、でもお清めの場もセットされてなくて、みんなウロウロして帰っちゃって。最後は色々ありました。彼は非常に特異な画家ではあったけど、美術的にどう評価するか、それは難しいところがあった。最初に三島や澁澤に評価されたが故に、美術関係者の妬みをかってしまったというね。

-最後に、メルマガ読者に向けたメッセージをいただけますか。

 私のメルマガに注目してください。注目しないと、損をします。読まないことで、あなたの人生において大きく失われるものがあるでしょう。皆様の期待に、私は確実に答えます。それが何かは、僕が書くことを読んでもらえればよくわかりますよ。

 

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