いわゆる「パナマ文書」の流出によって、アイスランドのグンロイグソン首相が辞任に追い込まれるなど、世界の政治リーダーやエリート層の間に衝撃が広がっています。日本政府は現状静観していますが、国民世論が「不公正」を感じ、企業や富裕層の尻拭いをさせられていると感じれば、当然反発は強まり、選挙でも不利になります。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
トラック1000台分の「極秘文書」は日本政局の火種となるか
「パナマ文書」スキャンダルの基本とよくある誤解
そもそもこの「パナマ文書」とは、タックス・ヘイブン(租税回避地)への法人設立を代行するパナマの法律事務所「モサック・フォンテカ」の、金融取引に関する過去40年分の内部文書のことで、これが今月4日に大量流出しました。
この情報を得た各国政府は、それぞれの指導者や著名人による脱税など、不正行為がなかったか調査を開始しました。
この40年分の機密文書を公表したのは、「国際調査情報ジャーナリスト連合(ICIJ)」という組織で、これらの文書は、世界の100以上の報道機関に流出しました。
その量が膨大で、「パナマ文書」のデータ量は2.6テラバイトと言われ、ペーパーにすると、トラック1000台分にもなるといわれます。この膨大な情報が今後続々と出てくることになります。
誤解されがちなのですが、企業がタックス・ヘイブンの地に拠点を置いたり、そうしたオフショア企業に資金を置いておくこと自体は、違法でもなんでもありません。
元来、タックス・ヘイブンとは、国際金融を活発にするために、意図して税を極端に低くしたり、全く免税にしたりする国や地域を設けたもので、発端はロンドンのシティ、つまりロンドンの金融特区にあります。
それが英国領のケイマン諸島やバージン諸島などの島国を、税の優遇によって国際金融の中継点として使うことになったものです。税金の安いところに本社を置くのは半ば常識になっています。
ではこの「パナマ文書」は何が問題になるのでしょうか。次の2つの問題が指摘されます。