FRBの3月利上げは見送りがコンセンサスとなっていますが、利上げに動けば株も債券も大きな混乱が予想される「テールリスク」の面があるだけに決めつけは禁物です。(『マンさんの経済あらかると』)
FRBに対する「強い利上げ圧力」はマーケットの想定以上
利上げ警戒怠れず。いつもと異なる事情あり
ECB(欧州中央銀行)が先週、市場予想を上回る「政策総動員」を打ち出し、市場の関心は今週の日銀、FRBの動きに移っています。
FRBについては利上げ見送りがコンセンサスとなっていて可能性は高くないとしても、利上げに動けば株も債券も大きな混乱が予想される「テールリスク」の面があるだけに、決めつけは禁物です。
市場は2月の雇用統計後でも、FRBは今年1回利上げできるかどうか、と予想し、利上げ時期は早くても6月、多くは9月以降とみているようです。
しかし、市場に準備ができていないときに利上げに出れば、それだけ市場に与えるショックが大きく、通常は当局もこれを避けます。しかし、今回は事情が異なる面があり、警戒が怠れません。
「真のキーパーソン」は利上げに前向き
まず、FRBでのキーパーソンがイエレン議長でなく、フィッシャー副議長とみられることです。
彼が国際金融資本とのパイプ役を果たしている面があり、節目での重要な意思伝達を果たしています。その副議長が、先週FOMC前の最後の機会に、労働市場は完全雇用にあり、インフレ率が目標に向けて高まっていると言いました。彼は市場ではぶれません。
イエレン議長の発言機会は最近ありませんが、腹心のウイリアムズ・シスコ連銀総裁が、海外市場の不安定のもとでも米国経済は影響を受けず、堅調で、緩やかな利上げシナリオは変わっていないと代弁しています。
副議長の認識と合わせて、これで利上げをしなければ、逆に道理に合わないことになります。
実際、利上げを阻害する要因となってきた低インフレも、FRBが重視する消費デフレーターがコアで1.7%にまで高まり、2%が視野に入ってきました。
ブレイナード理事は1回だけではわからないので、これが定着するのを待つべき、といいますが、時間給が2.2%増に後退したものの、生産性上昇率がほぼゼロのため、これでも単位労働コストが上昇しています。
言い換えれば、市場が利上げなしとみた「平均時給の伸び低下」は、FRBからみれば、見送り材料ではないことになります。
また市場が不安定と言いながら、1-3月のGDPは、アトランタ連銀の「GDPナウ」によれば年率2.2%成長と、ここ何年かの弱い1-3月と異なり、かなりしっかりとした数字が見込まれています。
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