年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用に関して開示しなければならないのは保有株式ではなく、将来国が支払わなければならない年金支給額(年金債務)だ。それができないのは、公開すると社会がパニックを起こす状況にあるからだ。
プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝えるメルマガ『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』がまぐまぐ大賞2015メディア賞を受賞。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が抱える2つの問題点
「保有銘柄を開示」意義は高くない
GPIFの運用のほとんどは「インデックス運用」と「(インデックスをベンチマークとした)ベンチマーク運用」だから、ルール通り運用しているなら保有銘柄を開示する意義は高くない。
塩崎恭久厚生労働相は8日の閣議後の記者会見で、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の投資先について『個別銘柄を含めて一定期間後に開示する方向性を議論してきた』と述べ、保有株式を公開する考えを示した。
公的年金の運用に関して開示しなければならないのは、将来国が支払わなければならない年金支給額(年金債務)だ。これを開示しない限り、GPIFがどれだけの運用利回りを出す必要があるのか分からない。
これが分からないということは、GPIFのポートフォリオが適正なものか否かの議論もすることはできないということ。
保有銘柄よりも国が抱えている年金債務を公開するべきだ。それができないというのは、公開すると社会がパニックを起こす状況にあるからだ。
安倍総理はGPIFは「世界最大の機関投資家」だと豪語しているが、それは「世界最大の年金債務を抱える機関投資家」の同義語でしかない。
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