キヤノンが東芝メディカル買収の報道。買収金額は7,000億円。東芝メディカルの売上高は4,000億円、EBITDAは340億円なので、PSR 1.7倍、EV/EBITDA 20.6倍。普通に考えたらこれは明らかに割高。一方でキヤノンにも事情がある。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
7,000億円は「普通に考えたら明らかに割高」だが――
証券アナリスト・栫井駿介氏の見方
キヤノンが東芝メディカル買収の報道。買収金額は7,000億円。東芝メディカルの売上高は4,000億円、EBITDAは340億円なので、PSR 1.7倍、EV/EBITDA 20.6倍。普通に考えたらこれは明らかに割高。
— 栫井駿介(つばめ投資顧問代表) (@tsubame104) 2016, 3月 9
一方でキヤノンにも事情がある。業績は非常に安定しているものの、主力のデジタルカメラはスマホの普及で衰退待ったなしの状況。財務状況に余裕があるうちに手を打たないといけない。実質無借金で、株主的には還元してもらいたいが、そうもいかないのが経営だろう。
— 栫井駿介(つばめ投資顧問代表) (@tsubame104) 2016, 3月 9
昨年スウェーデンの防犯カメラ会社を買収したのも未来に向けた投資の一環。しかしこれも売上高770億円の企業に対し3,300億円支払う大盤振る舞い。今回の東芝メディカルと合わせて、キヤノン多額ののれんを背負うことになる。のれんは将来的な減損リスクを意味する。
— 栫井駿介(つばめ投資顧問代表) (@tsubame104) 2016, 3月 9
東芝メディカルの医療産業は成長産業。衰退が見えているキヤノンはどうしても欲しかったのだろう。画像技術ではシナジーがあるかもしれない。世界的にはシーメンスやGE、フィリップスが強く、今後肉薄していけるかが大きな鍵となる。
— 栫井駿介(つばめ投資顧問代表) (@tsubame104) 2016, 3月 9
もし、買収後うまくいかなかったとしても、キヤノンにとっての財務的ダメージは知れている。実質無借金で、純資産は3兆円以上。リスクを取らなかったら成長はない。株主は温かく見守るしかない。
— 栫井駿介(つばめ投資顧問代表) (@tsubame104) 2016, 3月 9
東芝はこれで一連の不祥事から財務的には一息つける。成長事業を手放すのは痛いが、高値で売れたからよしとするしかない。売上高に占める割合は6%と、まだ多くの事業を抱えている。これから本格的な事業再編が進むことを期待する。
— 栫井駿介(つばめ投資顧問代表) (@tsubame104) 2016, 3月 9
『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2016年3月9日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。