「中央銀行はすでに限界点に来ており、これ以上は何もできない」
同氏は「主要中央銀行がリーマン危機後に量的緩和とゼロ金利でばら撒いた刺激策のコストゼロのマネーがアジアやその他の新興市場に流れて、信用バブルを膨張させてしまった。その結果どうなったかと言えば、主要中央銀行は泥沼にはまり込み、新興国でも公的債務+私的債務はGDPの185%、OECD加盟国ではGDPの265%になってしまい、2007年から見て35%(ポイントで)も増えてしまっている。リーマン危機後、新興国市場は景気回復の牽引役となったが、もう今ではその新興国経済自体が問題となっている」と語った。
同氏はG30会議のレポートの主席執筆者でもあるが、現在の金融システムにはもうアンカー役が存在せず崩壊しやすくなっているので、何が次の危機の切っ掛け、端緒となるかは全く分からないと述べている。
「人民元切り下げが切っ掛けであるかもしれないが、全世界の国々は自国通貨切り下げを否定していて、しかし実際は通貨安戦争となっている。だがこれは誰も勝者がいないゲームであり、終わりのない競争なのだ。米国やその同盟国による量的緩和マネーの垂れ流し政策を異次元緩和などと呼んでいるが、結局は将来から繰り上げたマネーの支払い効果しかない。やっている内に中毒状態となり最後は牽引力を失うものだ」
「連銀は1987年危機後、余りにも刺激策を打ちすぎた。何度も何度もやっている間は、後できちんと問題を安全に解決出来ると思い込んでいたのだ」
「1990年代、中国や東欧ロシア経済が突然世界経済に踊り込んできて安価な輸出品で全世界を溢れさせた。製品価格が下がり、資産インフレを覆い隠してしまい、政策立案者は怠惰となって何も行動をしなかったのだが、それは全部間違いだった。インフレをコントロールすれば、全ては上手くいくと信じていたのだから」
「振り返れば、このグローバリゼーションの段階で善意のデフレを起こさせるべきだった。債務を膨張させることで1930年代の債務デフレというもっと悪い状態を醸成させてしまったのだから」
「連銀は現在、量的緩和から抜け出し、船を正しい方向へ転換させようとしているが、恐ろしい板挟みの中に陥って身動きができないでいる。債務の罠だ。状況は極度に悪いので、正解はないのだ。もし利上げをすれば、その結果は好ましくない状況にするだけだ。反対に利上げしなければ、もっと状況が悪くなるだろう」
「この混乱から抜け出す容易な道などないが、政府にとっては今後、もう中央銀行に依存しない道を取る良いスタートになるだろう。インフラ整備に政府が投資をすれば良いのだ。中央銀行に依存するのは危険だ。中央銀行が対処できるのは流動性が枯渇した時だけで、取り付け騒ぎ等の混乱に対処する処方箋しか持っていない」
「中央銀行はすでに限界点に来ており、これ以上は何もできない」
以上のように語った。
メソポタミアの書記の訓練の中に、金利が何%であれば、どれだけの期間で2倍になるのか?4倍になるのか?という練習問題があった。借金が膨張すると、その負債返済に押し潰され経済成長が阻害されるということが認識されていたので、借金特赦のシステムも存在し、それが大きな祝典にもなった。
ウィリアム・ホワイト氏が回答している上記のインタビューを、私の偏見を交えて概括しますと、「リーマンショックよりも大きな雪崩が来る。量的緩和の繰り返し、そして異次元緩和で債務が膨張した結果、債務不履行の大雪崩が来る。秩序ある大雪崩などはなく、対策はもうない。頼みの綱であった牽引機関車役の中国、新興国自体が危ないからだ。となると借金棒引きしかなく、それは投資家、預金客が負担するしかない」ということになります。
※太字はMONEY VOICE編集部による