日本株を取り巻く環境と気になる安倍内閣支持率
ファンダメンタルズ
上場企業の中間決算は、売上+2.1%、営利+25.0%、当利+20.7%なので強い基調でしたが、7-9期だけで見ると経常は2.4%増益と大幅に鈍化し、10-12期は減益が予想されています。10月日銀短観でも下期の下方修正をする企業が多かったので、企業収益のモメンタムは明らかにピークアウトしています。その理由は、トヨタの下期見通しやキャノンの下方修正の要因のように中国経済の減速がメインです。
中国を理由にした下方修正は欧米企業では一般的ではないので、日本株はやはりどの先進国よりも中国の影響を受け易いといえますので、中国経済への懸念が残る以上はファンダメンタルズでは買い続けるのは難しい状況です。
また、リスクオフ時は円が買われ易いので、企業収益の下方修正懸念が高まりますので、世界のリスクオフ時は他の先進国以上に新興国に連動して下げやすいでしょう。
一方の米国企業は、7-9期で-0.8%の減益になり、10-12期も減益が予想されています。
このように、企業収益では日米株価は最早買う事は困難になっています。こういった場合でも株価が上がるには、マネーの総量が増える過剰流動性相場が持続することが不可欠ですが、今まで観てきたように、マネー総量はむしろ減少する方向にあるので、株価を押し上げる材料がほとんどありません。
バリュエーション
日銀の追加緩和のお陰で突出してマネーが集まる市場となった日本株は、どの国よりも過剰流動性相場の恩恵を受けPERが上昇しても良さそうなのに、なかなか PERが上がりませんでした。しかし、日米欧中央銀行が引き締めバイアスをかけたことで過剰流動性相場は終了しそうです。
過剰流動性相場は業績以上に株が買われる相場なので、過剰流動性相場時はPERは上昇しますが、過剰流動性相場が終焉するのと世界的なリスクオフに伴い、日本株のPERは今後も切り下がっていくでしょう。
需給
一昨年10月末のGPIF改革で発表された新基本ポートで日本株の標準ウエイトは25%です。昨年4月以降ずっと新基本ポート比較でアンダーでしたが、7月に入ると2万円超の日経平均に炙り出されたのか猛然と買い始め、結果として9末で7兆円程度の運用損を計上してしまいました。
しかし、10月に入っても買い越し基調が続き、11月こそは売り越しましたが昨年12月の米国の利上げ以降のマーケットで一番の買い主体は信託銀行になっています。
年明け後の3週間ずっと買い続けています。16000円を付けた週はさすがに売り叩いたかと思いましたが買い越しています。
世界的なリスクオフの中で買い向かう暴挙がいつまで続くか不明ですが、基本的に信託銀行はリスクが顕在化すると水準に関わらず、損益に関わらず売ってきます。実際、チャートを見ると判るように、2013年5月のバーナンキショック、2014年初頭の新興国危機、昨年3月のギリシャ問題顕在化、昨年8月の新興国危機時はいずれも売り越しに転じています。
このため、今後本格的なリスクオフになった場合、一転して売り手になるでしょう。
一方の外人投資家は、6月以降アベノミクス始まって以来最も弱気なポジションにしたのが裏目に出て、世界的にリスクオンになった10月11月と踏み上げられましたが、ショートカバーは終了した模様です。そして、年明け後は中国発のリスクオフで日本株の売り姿勢を再度強めています。
日経平均先物の外資合計の建玉残高がショートに転じたのは昨年6月からですが、6月以降、外人投資家が急激に日本株に対してネガティブになった点は以下の通りです。
- 追加緩和期待が消えた → 再び醸成
- 政権支持率の低下→当初は安保、今は小康状態(内閣支持率51% 甘利氏問題は影響せず)
- アベノミクスへの疑念(成長戦略がいつの間にか財政再建に代わってしまった)
- 隣に中国がある
- (新)政局混乱 甘利経済大臣問題
最近の毎日新聞の支持率調査では、政権支持率に変化はありませんので、甘利経済大臣の問題は日本人としては一旦終わったようですが、外人からすると「アベノミクスとTPPの旗振り役が不祥事で辞任した」と映りますから外人にとってはネガティブです。
これに対して後で見るように財政期待などのポジティブ要因もありますが、6月以降の政府や日銀の対応で、アベノミクスは既に終りという認識をもたれてしまっているので、見方を変えて強気になるにはしばし時間が必要かと思われます。
『元ヘッジファンドE氏の投資情報』(2016年2月1日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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日本株のファンドマネージャーを20年以上、うち8年はヘッジファンドマネージャーをしてきたE氏による「安定して稼ぐコツ」「相場の見方」「銘柄情報」を伝授していきます。