新興国発のリスクオフシナリオはやはり中国がポイントに
次に新興国発のリスクオフシナリオですが、年明けからの中国株安と元切り下げをきっかけに売りこまれていた新興国通貨は、ECBの追加緩和示唆で一旦下げ止まりを見せています。
米FOMCのハト派的メッセージでドルも上がる環境ではないのですが、日欧の通貨安競争に負けため、ドルインデックスは結果として上昇しています。
それでも、新興国通貨が下落していないので、ECB発の追加緩和期待と日銀の追加緩和で新興国危機は一息ついた形になりました。
新興国危機は、新興国自らの内部崩壊で起きるというより、中国発のデフレによる資源価格下落か日米欧中央銀行の引き締め的な金融政策によって限界的な市場から資本流出する事で顕在化すると見ていたので、日欧中央銀行の緩和政策への変更は新興国危機の発生をある程度防いでくれるでしょう。
もちろん、先の項目で見たように、欧州の追加緩和は3月に検討するだけで今は何もしていないし、日本のマイナス金利導入で新興国へリスクマネーが行くわけでもないのでその効果の持続性はあまり長くないです。しかし、一定程度の抑止効果がある以上、フラジャイル5クラス程度の主要新興国が急激な外貨準備減少でデフォルトリスクが出るなど突発的なリスクが顕在化しない限り、日欧中央銀行の緩和姿勢で1カ月程度は新興国危機は延命した可能性が高いと思われます。
最後は中国経済懸念(中国株だけでなく元切り下げリスクも出てきたのでリスクを中国経済全体にします)です。昨年8月のショック以降3ヶ月ほど、景気対策期待や株の買い支えもあって上海総合指数は落ち着いていましたが、年明けから急に壊れ始めました。
元の介入で買い支えているのに先週も1週間で6.1%も下げているので、もはや打つ手なしの状態です。
現時点で、最も危険かつ終わっていないリスクは更なる中国株安と中国経済不安です。
重要なことは、昨年8月の元安ショック相場では当局の介入ラインと見られていた3000ptをあっさり切ってその後も下落が止まらない事です。
かねがね私が指摘している2500ptが現実味を帯びてきました。
これに対しての当局の手立てが限られてきています。昨年9月以降経済対策期待を何度も匂わせましたが、実際大型予算がついた対策は出ていません。中国の国家予算もかつかつなので、株価浮揚のための対策に回す金がないのです。なので、リップサービスと金利引き下げという金融政策くらいしか手段がないのですが、このうちの金利引き下げについては「元安誘導になってしまう」ため、当局は消極的になっています。
金利を下げれば魅力度が低下すると判断したマネーが海外に流出するので元は下がりますが、元が下がると世界に危機をまき散らすということで中国の信認が揺らぐため、簡単に金利を下げることが出来なくなってしまっているのです。
つまり、このようにどう転んでも中国発のリスクオフになり易いのです。
- 景気対策のため元を切り下げる→世界の新興国が危機に陥る→世界的なリスクオフ
- 元を維持する→株安の対策がなくなる→中国株安が更に進む→中国経済懸念で世界的なリスクオフ
統計操作しても、足元の鉄道貨物輸送量は前年同期2割近い落ち込みです。
中国のエネルギーの過半を占める石炭火力は、鉄道貨物で石炭を運んでいるので、鉄道貨物が2割落ちているということは、工場稼働などエネルギー需要がかなり落ちているとしか考えられません。発電量も再びマイナスになっているので、実態は日を追うごとに悪化していると思われます。
今週はPMIが発表されます。
他国に比べ低位安定しているように思える中国PMIですが、PMIが鉱工業生産とほぼい同義であることを考えると、エネルギー需要との統計格差が大きすぎるのが判るでしょう。
株式市場に抜本的な対策が出ていない中で経済が悪化し続けている以上、今後も中国株は下げ易いと見るべきです。
このため、かなりの確度で現在は「中国株暴落シナリオ入り」していると思われます。