5.日銀の80兆円(年間)の国債の買い超はどうなるか
マイナス0.1%の金利の場合、日銀が金融機関から国債を買うオペレーションはどうなるのか?(1年に80兆円の増加枠)
新聞ではあまり報じられませんが、今回のマイナス金利の導入前に、満期までの期間4年以内の国債ではマイナスの金利がついていました。
国債1年物-0.024%、2年物-0.026%、3年物-0.015%、4年物-0.003%、5年物+0.011%、7年物+0.033%、10年物0.229%、20年物0.834%です。
国債のマイナス金利は、額面金額より高い価格で日銀が買い上げているということを意味します。0.01%の金利で100万円の額面だった残存期間5年の国債の金利がマイナス0.1%に下がると、その国債は以下の価格に上がります。
国債価格=(1+0.01%×残存期間5年)÷{1+(-0.1%×残存期間5年)}=1.0005÷0.995=1.0056
つまり100万円で流通していた国債(5年物のケース)を、100万5600円で日銀が買うのが、金利をマイナス0.1%に下げることの実際です。この国債を満期までもつと、100万円の償還しかないので、5600円の損をします。マイナス金利では、国債の保有者が損をするのです。
国債を満期までもつと、償還される金額が買った価格に足りないため損をしますよというのが、マイナス金利です。プラス金利のときは償還金額が下回ることはありませんが、マイナス金利では、国債の流通価格を償還金額が下回ります。
このためマイナス金利になると、金融機関は保有国債を高く買ってくれる日銀に一層多く売る方向になります。
6.当座預金金利のマイナス0.1%に金融機関はどう対応する?
その国債を売って日銀当座に預けていた代金には、従来は0.1%の金利がついていました。金利のつく国債を保有したままの金利効果があったのです。
今後は、現在より増えた日銀当座の預金の金利はマイナス0.1%です。1年に0.1%の金利を日銀に取られます。
金融機関はどうするか?国債を日銀に売って得た円で、プラス金利の米国債を買う動きになるということです。これが、瞬間に3円程度の円安(=ドル高)になった理由です。
このマイナス金利がデフレ脱却に効果を生むかと言えば、それはほとんどないでしょう。数%の円安により輸入物価が上がる分の卸価格の上昇だけが起こります。
日銀は、原油と資源価格の下落により「物価目標2%」の達成の見込みがなくなって焦っています。それを示したのが今回のマイナス金利でした。これを受けて日経平均が上昇、ドル円は下落(円安)となりましたが、ハリケーンではない。真冬の一陣の風です。
『ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで』(2016年1月30日号外)より抜粋、再構成
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