株式相場は年初から波乱局面となり日経平均は1月20日、21日の連続急落によって1万6017円と1万6千円割れ寸前となりました。しかし、翌22日には941円高と大幅に反発、1万6958円まで戻しました。なんとも荒っぽい相場の動きです。
こうした局面で相場変動の大きさのみに目を奪われると相場判断の位置取りが混乱してしまいますが、相場の変動ではなく水準に注目することで判断のとっかかりを得ることができます。
こうした判断の材料になるのが日経平均の“理論株価” です。今回はこの理論株価を基準に今回の変動を妥当な相場水準という立場から評価してみましょう。(『投資の視点』日暮昭)
筆者プロフィール:日暮昭(ひぐらしあきら)
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を用いた客観的な投資判断のための市場・銘柄分析を得意とする。
変動限界を下回って反発した日経平均、最新分析(~1/22)
相場変動の大きさではなく妥当水準で考える
下図は昨年の8月から直近の1月22日までの日経平均と理論株価の日次ベースの推移を示したものです。
青色の線が日経平均、赤色が理論株価を示します。
日経平均は昨年12月初めを境に下げに転じ、2016年初から一段と下げ足を強めており、一方、理論株価は12月中旬から月末にかけて日経平均にやや遅れて下げ足を強め、月末時点で日経平均に追いつく形で両者はほぼ一致しています。
これは理論株価が業績の伸び悩みと円相場の強含みを背景に下げ基調に入るのを日経平均が先取りしたことを示しています。
実はちょうどこの逆のケースが昨年の年初から5月にかけて生じています。2015年度の業績が大幅に上ブレすることで理論株価が上昇するのを日経平均が先取りし年初から大幅に上昇、6月に理論株価が追いつく形で両者が一致しています。
さて、上の図から日経平均は理論株価を大幅に下回り、理論株価とのかい離率は8.45%となっています。
ここで、これまでの日経平均と理論株価の関係を見てみると、かい離が一定程度まで拡大すると日経平均が理論株価に回帰する傾向があることが分かります。
下図は日経平均と理論株価の長期の関係を月次終値ベースで見たものです。対象期間は理論株価を算出できる最古の期となる2002年5月から直近の1月22日です。
図から、青線の日経平均は赤線の理論株価をはさみ上下に振れながら、ある程度離れると理論株価に戻るように推移していることが読み取れます。
そこで、どの程度離れると理論株価に立ち戻るのかを統計的に整理して2つの基準となる範囲を決めます。 一つは通常の変動と見なせる範囲、もう一つは通常の変動とはみなせない範囲、言い換えるとその範囲を超えると通常の変動の範囲に戻る可能性が高い、すなわち反転の可能性が高い限界範囲、ということになります。
ここでは、これら変動の範囲を2014年1月からの直近までの2年余りの変動実績をもとに決めることとします。
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