罪になる。と、公正取引委員会は考えているようです。
言葉を選ばずに書かせてもらうと、「狂気」です。
今後、強制捜査に入った公正取引委員会と東京地検特捜部がいかなる結論に至るのかは分かりませんが、もしも「震災時の道路復旧のための仕事の割り振り」までもが独占禁止法違反ということで刑事罰の対象になってしまうのでは、今後、我が国がまたもや大震災に見舞われた際には、東日本大震災のような早期の道路復旧は不可能になります。
道路という物流の胆がいつまでたっても復旧せず、被災地で国民が死んでいく事態になりかねないでしょう。
怖いのは、各紙の報道を見る限り、
「震災発生の復旧における談合が本当に悪なのか?」
といった論調が全く見られない点です。
そもそも、日本の土木・建設の供給能力を維持し、かつある程度の競争を維持するために、「指名競争入札+談合」というシステムが悪であるなどとは全く思えません。日本が自然災害大国である以上、各地に土木・建設企業が存続してもらわなければ困りますし、かつ競争により生産性向上に努めて貰わなければなりません。
「各地域に企業を存続させる」と、「企業間競争により土木・建設分野の生産性を高める」の二つを両立させるために、「指名競争入札+談合」という知恵を先人たちは生み出したのですが、我が国はそれを「市場競争に反する(反しますが)」という単純かつ愚かな考え方に基づき、破壊してきました。
挙句の果てに、震災時の仕事の割り振りまで「談合」ということで公正取引委員会が問題視する。さらに、その異常性について誰も疑念を抱かない。
このままでは、普通に我が国は「亡国」に至るでしょう。
とはいえ、日本国民であるわたくしにとっては他人事ではありませんので、あえて声を大にして叫びたいと思います。
震災といった非常事態発生時に、速やかな道路啓開のために業者間で仕事を割り振り、調整をすることは、当たり前の話である、と。
それを処罰しようとする考え方自体が、異常極まりないのです。
『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016/1/20号より
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