プーチン真の狙い、ガスパイプラインを巡る攻防
ロシアのシリア空爆は地中海やカスピ海の潜水艦や艦船の参加を伴うもので、半端なものではなかった。そこまでしてテロに報復しアサド政権を守る隠された理由は何か。
ISISのロシア国内への波及を未然に摘む、クルド族を巡ってアメリカとトルコの利害を衝突させ、NATOの足並みを乱すという副次的効果を加えても到底説明できない。
ロシアがどうしてもアサド政権を守らなければならないと考えたのは、欧州のガス市場でのロシアの独占的権益を守らなければならないからだ。
ロシアには、親米反アサドのカタールが計画しているカタール⇒サウジ⇒ヨルダン⇒シリア⇒トルコ経由のパイプラインによる欧州向けガス供給を何としても抑える必要がある。
同様に、カタールパイプラインと競合する形で計画されているイラン主導のイラン⇒イラク⇒シリア(ラタキア)⇒トルコ沿海の地中海底パイプラインも棚上げさせなければならない。
どちらも交通の要衝シリアを経由しないと完成しない。
アサドがいる限り、両パイプラインはできない。そうすれば、ロシアが独占してきた欧州向け天然ガス供給には誰も挑戦できない。
逆に、2つのパイプラインが完成すれば、トルコはガス輸入をロシアからカタールとイランに切り替えることができるばかりか、莫大な欧州向けパイプライン通行料が転がり込むことになる。
ロシア・トルコ間のこうしたガスを巡る水面下のせめぎ合いこそ、トルコ空軍によるロシア機撃墜の背景ではなかったのか。
改めて、古くからの地政学上の要衝シリアの重みを思い知らされる。アラビアンナイトに頻繁に登場したダマスカスはこの国の首都なのだ。
『投資の視点』(2015年12月15日号)より一部抜粋
※記事タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による
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