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放射能汚染と糖尿病の激増~相次ぐ「突然死」の裏で何が起こっているか

日本人の膵臓がんは戦後12倍。核実験と膵臓の病気はシンクロしている

アーネスト・スターングラス(Ernest Joachim Sternglass)という著名なアメリカの物理学者が、今年の2月、91歳で亡くなりました。

冷戦時代の核実験によって世界中に降り注がれた放射性降下物と、原発から出て来る放射性廃棄物による人体への健康被害について、広範な疫学調査を行い、議会の公聴会に証人としても呼ばれた学者です。

スターングラス博士の死はNYタイムズなど多くの主流メディアで報じられたほど、アメリカの核行政に大きな衝撃を与えました。彼は、1960年代から、核実験や原子力発電による低レベル放射能の影響を訴えて続けて来た、反原発の立場を取る数少ない科学者の1人でした。

アーネスト・スターングラス
ベルリン生まれ。両親はユダヤ人の物理学者。1938年、ドイツを離れる。16歳で高校を卒業しコーネル大学に入学。国防省海軍兵器研究所en::Naval Ordnance Laboratory、ウェスティングハウス社のWestinghouse Research Laboratory に勤務、多数のプロジェクトに関わった。

1967年からピッツバーグ大学の放射線物理・工学研究所を指揮し、放射線画像診断における線量を低減させる新しい投影技術の開発をした。また、核実験による放射性降下物と原子炉からの放射性廃棄物による人体の健康、特に発達中の胎児や幼児への影響について広範な疫学調査を行なった。この結果をもとに、アメリカ合衆国議会、米国科学アカデミー、州議会、政府の規制当局での公聴会の証人として証言した。

元ピッツバーグ大学医学部放射線科名誉教授。専門は放射線物理。

出典:アーネスト・スターングラス – Wikipedia

そのスターングラス博士が、2006年の2月、初来日し、青森県の六ヶ所村の核再処理施設を視察した後、青森市で講演を行いました。そのときの記録が残されています。
「放射線と健康」アーネスト・スターングラス博士

その講演記録の、【スライド13】から【スライド19】の7ページにわたって、糖尿病の増加と放射線被曝との関係について解説しています。上のリンク先を読んでいただければいいのですが、非常に重要なので、あえて、以下に、その要点部分を抜粋しておきます。

【スライド13】

世界中の政府や国際原子力安全委員会などは「放射能による影響はガンと子どもの先天性障害だけだ」とみなさんに信じ込ませようとしています。しかし実はさまざまな面で健康に影響を及ぼしているのです。

乳児死亡率や低体重児出産のほかに糖尿病があります。

1981年から2002年の間に、アメリカの糖尿病罹患者は580万から1330万に増加しました。それと同時に、原子力発電所の稼働率は40~50%から92%に増大しています。(注:アメリカ国内の原子力発電所の建設は1978年以来ないので稼働率が発電量を反映する)

……1959年、ドイツのスポーディ博士などのグループが、ストロンチウム90をたくさんの実験動物に与えました。それらは当初、カルシウムのように骨に蓄積すると予想されていたのですが、実験室がイットリウム90のガスで充満していることを発見しました。

イットリウム90は、ストロンチウム90の核から電子がはじき出されると生成する元素です。このようにストロンチウム90からイットリウム90に変換します。

そこで実験動物の内蔵を調べた結果、ほかの臓器に比べて膵臓にもっともイットリウム90が蓄積していることが判明しました。

また、肺にも蓄積されていましたが、それはラットの肺から排出された空気中のイットリウム90をまた吸い込んだためだと考えられます。

膵臓は、そのランゲルハンス島という場所にあるβ細胞(ベータ細胞)からインスリンを分泌する重要な臓器です。それがダメージを受けると2型糖尿病になり、血糖値を増大させます

膵臓が完全に破壊される1型糖尿病になり、常にインスリン注射が必要になります。主に、若年層の糖尿病の5~10%は1型糖尿病です。アメリカと日本に共通していることですが、ともに膵臓がんの数が非常に増加しています。

【スライド14】

アメリカの普通死亡率推移(1900~1999)。これは乳幼児死亡率、肺がん、膵臓がん、乳がんなどすべてのガン、糖尿病などのすべての死亡率(1000人中)の総計です。

1900年から1945年までは年率約2%で死亡率が下がって行きました。唯一の例外は、1918年に世界的に流行したインフルエンザの時です。このときはアメリカも日本も世界中が影響を受けました。

この間ずっと、化学物質や喫煙率も増えているのにもかかわらず、死亡率は減少しています。それはネバダの核実験が始まる1951年ころまで続きます

そして、核実験が終わって(死亡率は)少し下がりますが、その後は、ほとんど下がらずに横ばい状態が続きます。

予想死亡率減少ラインから上の実際の死亡率ラインとの比較から、アメリカでこの間2000万人が余計に死んだことになります。広島や長崎で死んだ人の数よりはるかに多くの数です。

【スライド15】

これは日本の膵臓がん死亡率のチャートです。

前述したように、1930年から1945年ころまでは低く、まったく変化がありません。しかし、1962~63年ころまでには12倍に増加しています。これは東北大学医学部環境衛生の瀬木三雄博士たちの1965年のデータです。

これからお話しすることは、本当に信じられないことです。この12倍になった死亡率が、2003年までには、さらにその3倍から4倍になったのです。

ストロンチウム90やイットリウムが環境に放出されることがなければ、膵臓がんの死亡率は減少していたでしょう。アメリカでは約2倍になっています。

【スライド16】

これは同じ東北大学のデータで、日本の5~9歳男の子のガン死亡率チャートです。1935年から1947年までは、実際に死亡率が減少しています。

それ以降、ソ連の核実験やアメリカの太平洋での核実験が度重なるにつれ、6倍に上昇しています。そして、これ以降もさらに増加していることがわかっています。

これらのデータは、政府刊行物である「人口動態統計」からとりました。このような詳細にわたる統計は世界でもいままで見たことがありません。

【スライド17】

同様に東北大学のデータです。これはアメリカ(非白人)と日本の男性のガン死亡率を比べたものです。

1920年から1945年まで、この間、喫煙率や化学物質の量が増加し、また石油、ガス、石炭の消費量増加による大気汚染も増加しているにもかかわらず、日本ではほとんどガンの増加はありません

非常に重要なのは、このことを理解しないと放射能を理解することができません。

1945年以降、ガンによる死亡率が急に上昇し、1962年にまでに42%増加します。それ以前に、アメリカと日本で少し減少したところがありますが、これは核実験を一時停止した時期です。

これらは核降下物の低レベル放射線が原因であることの強力な証拠です。しかし、政府は、その量があまりにも低すぎて検出できないと主張しています。

【スライド18】

これは1970年以降の日本の原子力エネルギー生産量を示したものです。一時増加が止まった時期もありますが、最近では急激に上昇しています。これは原子炉の稼働率をなるべく上げるようにしているからです。アメリカも同じです。

【スライド19】

1950年から2003年までの、さまざまなガンによる男女別死亡率の推移です。1970年ころから急に上昇し始めていますが、そのずっと前の、1950年ころから上昇し始めています。

もっとも増加したのは、男女とも肺がんです。

大腸がんは女性の方がやや高いですが、やはり急激に上昇しています。膵臓がんは1962年までにすでに12倍に増えていますが、さらに大幅に上昇しつづけています。このことから、日本になぜアメリカの倍の糖尿病があるのかという説明になります。

以上からわかるように、スターングラス博士は、誰でも入手できる国の公式データから、冷戦時代の核実験によって大気中に放出された放射性物質の量が増えるにつれて、また、原発の稼働率がアップするにつれて、膵臓がんや糖尿病の発症が劇的な増加をみせていることを指摘しました。

つまり、大気圏から地上に降下した放射性物質の量と、原発から漏れ出る放射性物質や核廃棄物の量と、膵臓がんや糖尿病の増加がぴったりシンクロしていると主張しているのです。

Next: 福島第一原発からはストロンチウム90が海洋に放出され続けている

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