拡散されるべき「ISDS条項」の危険性、国際訴訟は負け確定?
さらに、一般に報じられない大きなリスクを秘めているのが「ISDS条項」です。これはInvestor-State Dispute Settlementの略で、企業や投資家が国を相手取って訴えることができることを定めた条項です。
訴訟となれば、世銀の下部組織で国際裁判を行うことになりますが、そこでの構成メンバーを考えると、米国有利、日本不利と言わざるを得ません。
一例を挙げましょう。米国が遺伝子組み換えの大豆などの農産物を日本に売り込もうとします。日本では商品の表示をきちんとすれば、消費者がこれらを敬遠する可能性がありますが、米国企業は、日本で売れないのは、国が輸入品の扱いを差別しているからだ、として国際訴訟を起こしてくる可能性があります。
一旦訴訟となると、これまで米国は負けたことがなく、日本が敗訴する可能性が高くなります。日本が負けると、日本政府は罰金をとられるうえに、米国企業が「差別されない」と思う形のルールを受け入れざるを得なくなります。
その結果、日本の消費者は遺伝子組み換え食品などを知らずに消費することになるかもしれません。食の安全が揺らぎます。
臨時国会「開催見送り」は説明責任の放棄だ
今回のTPP協議においては、実は国民が知らされずに秘密裏に進められた交渉が少なからずあります。
ISDS条項はもちろんのこと、この「秘密」問題についても、引き続き国会で説明を求めるべきで、与野党ともに問題を包み隠さず、国民に開示し、広く議論すべきです。
それなくして、農業などに「TPP補助金」を与えて手打ち、とされては困ります。
『マンさんの経済あらかると』(2015年10月12日号)より一部抜粋、再構成
※見出し、太字はMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。