ロシアの「イスラム国」空爆は相当な成果をもたらしている。一方この空爆によって、アメリカは過去1年半ほど「イスラム国」を空爆してきたものの、その攻撃は真剣に行なわれていなかった事実が明白になった。むしろ「イスラム国」が米・英軍から積極的な支援と武器の供与を受けているのは明らかだ。(未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ・高島康司)
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ロシア軍のシリア空爆
9月28日、ロシアはシリアの「イスラム国」の拠点である「ラッカ」を中心に激しい空爆を開始した。すでに120回の空爆が実施され、「イスラム国」および、「アルカイダ」に相当な被害を与えている。
ロシア軍参謀本部によると、今回の空爆で「イスラム国」はパニックに陥っており、すでに600人の戦闘員が攻撃を避け、ヨーロッパに逃れたとしている。
また、「イスラム国」のほか、「アル・ヌスラ戦線」「ジェイシュ・アル・ヤルムーク」のなどのテロ組織の戦闘員3000人以上が、シリア政府軍の攻撃とロシア空軍の空爆を恐れて、シリアからヨルダンへ逃げたと伝えられている。
さらに、10月7日にはカスピ海からロシア海軍の4つの艦艇から26発の巡航ミサイルがシリアに向けて発射され、ロシア空軍のみならず海軍も「イスラム国」撃滅の作戦に参加した。
ちなみに巡航ミサイルはイランとイラク上空を通過してシリアに着弾するため、両国の空域上空を飛ぶ許可が必要となる。イランとイラクはロシアにこの許可を与えていた。
アメリカ軍の「イスラム国」支援
このように、ロシアの「イスラム国」の空爆は相当な成果をもたらしている。一方この空爆によって、アメリカは過去1年半ほど「イスラム国」を空爆してきたものの、その攻撃は真剣に行なわれていなかった事実が明白になった。
このメルマガの読者であれば覚えているだろうが、「イスラム国」がアメリカ軍とイギリス軍の積極的な支援、ならびに武器の供与を受けていることはあらゆる証拠から明らかになっている。
アメリカは、イスラエルに敵対しているシリアの「アサド政権」の打倒 を最優先に考え、これと敵対している反政府勢力の「イスラム国」をむしろ支援する動きをしていた。
また「イスラム国」は、中東でイスラエルに挑戦する能力のある国家をすべて壊滅し、中東を恒常的な混乱状態に置くというイスラエルの戦略を実行するためのツールとして利用していた。
そのため、中東における「イスラム国」の拡大とそれによる中東全域の流動化は、イスラエルとこれを支援するアメリカとイギリスにとっては好都合な状況であった。
このような状況のため、アメリカは建前では「イスラム国」の空爆を実施していたものの、「イスラム国」の軍事拠点や施設の破壊は回避し、「イスラム国」の戦闘能力に実質的に関係のないターゲットだけを空爆していた。
今回、ロシアの空爆が相当な成果を上げることによって、これまでアメリカの実施していた空爆が単なる建前だったことがはっきりした。