世界が注目する米利上げをめぐり、中国や新興国市場を持ち出すイエレンFRB議長の右往左往は、我が国の「失われた20年」を演出した日銀元総裁の三重野康氏や速水優氏を彷彿させる。(山崎和邦)
速水優第28代日銀総裁に似てきたイエレンFRB議長
A級戦犯による「前言撤回、曖昧な表現」を振りかえれば――
既報やマネーボイス連載(大蔵省証券局と三重野日銀の大罪 平成バブル崩壊の真相)で述べたとおり、我が国の「失われた20年」を演出した“功労者”は日銀元総裁の三重野康氏と速水優氏であった。
前者は、天・ヒト共に許さざるA級大戦犯者であり、後者もまたA級戦犯者である。
速水氏は日銀のあと由緒ある大手商社の日商岩井に行き、経営の失敗から数年でこれを大手ランクから脱落させ中堅商社レベルに落としめ、それでも足らずに日銀に戻ってバブル崩壊後の日本経済を徹底的に弱体化させた。
その“功労”の最たるところは、前言撤回の反復であり、多義的な解釈を要求する曖昧な表現であり、時ならぬ時節に量的緩和の解除をしたことである。
いまの黒田さんは「俺は違うぞ」とばかりに、中央銀行総裁として普通は言わない「躊躇なくやる」「なんでもやる」を言ってのけた。
優柔不断、前言撤回の速水氏や学者肌の白川方明氏との違いを鮮明にしたつもりであろう。しかも2度目の緩和はカラ売り比率の高まった金曜後場の立会時間中に為したから、市場は過剰とも言えるモメンタムでこれに応えて反応した。
中国や新興国を持ち出し“速水化”著しいイエレン氏、健康不安説も
いっぽう、FRBのイエレン女史はと言えば、米利上げをめぐって中国を持ち出したり新興国市場を持ち出したりしている。
「世界の警察官は辞めたと言ってレームダック化したオバマさんと私は違うわよ」とでも言いたいところかもしれないが、これでは“国益のためなら何でもやる”というアメリカの独善的だが強いスタンスを喪失する。「中国経済が収まらないうちは利上げはできない」と受け取られる。
世界経済の4分の1を占める強大国の言うことではない。
またイエレン女史は9月24日の講演中に20秒以上にわたり言葉を詰まらせるなどし、健康不安説が出ているらしい。これも速水元総裁と似ている。
FRB議長が信認を得られないまま利上げしたら、速水氏が不良債権山積みの中で量的緩和を解除したと状態と似てくる。つまり、株式市場にはマイナスに響く。
『山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2015年10月4日号)より一部抜粋・再構成
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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。