依然として強気と弱気が激しく交錯する市場。目先は主要国の株価などが一段安する可能性が否定できません。ただし、そろそろ日米株価は底値圏に達したと考えられます。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)
※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2018年2月11日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。
馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」2018/02/11より
過ぎし花~先週(2/5~2/9)の世界経済・市場を振り返って
<世界市場は極めて荒い動きに、全面的な株安・円高商状>
先週の世界市場は、世界的に株安・円高方向へ向かい、しかも日々および日中の値動きは、極めて荒いものとなりました。ただし、このところ上昇が目立っていた米長期金利は、米株安によって、頭が抑えられました。また、円相場も、対米ドルでは上昇が限定的(米ドルは円以外の主要通貨に対しては上昇気味)でした。
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来たる花~今週(2/12~2/16)の世界経済・市場の動きについて
<目先は一段安の可能性が否定できないが、そろそろ内外市況は底値「圏」に達したと考える>
(まとめ)
市場には依然として強気と弱気が激しく交錯しており、市況は不安定な状況が続くと懸念します。そのため、目先は主要国の株価などが一段安する可能性が否定できません。ただし、そろそろ日米の株価などは、底値「圏」(ぴったり底値だとは言えないが、底値に近い状態)に達したと考えます。
(詳細)
今週の世界市場も、材料がどうか、ということではなく、心理的な振れに支配されると見込みます。まだ株価などが下落するのではないか、といった、何となくの弱気と、もう実体経済などから比べると割安なのではないか、といったような強気が、激しく市場で交錯し、市況はまだ不安定な状況が続きそうです。
加えて、これまでの株価下落や米VIX指数の上昇で傷んだポジション(クオンツ取引などを含む)がまだ整理しきれておらず、理屈抜きの投げ売りも目先は出るように思われます。
このため、短期的には、主要国の株価などがもう少し下落する展開が生じることは、否定できません。
目先いつまで(底入れのタイミング)どこまで(底の価格)日米株価などが下落するのかは、全くわかりません。ただ、ある程度のメドを試算しています。その試算に基づくと、日米の株価は、既に底値「圏」(ぴったり底値だとは言えないが、底値に近い状態)だと考えます。
底値に「近い」というのは、数値で具体的にどのくらい近いのか、というご質問も出そうなので(笑)、たとえば日経平均株価で言えば、2/9(金)の終値(2万1,382.62円)から、もう2,000円幅は下げないだろうが、1,000円幅以上下げる可能性はまだ十分残っている、というイメージです(「ここから1,000円以上下がるのは、ちっとも近くない」とおっしゃる方もおられることとは思いますが、最近の高値(終値ベースで1/23(火)の2万4,124.15円)から3,000円弱下落してきたことを踏まえれば、あと少しです)。
さて、今週の材料は、たとえば日本企業の決算発表(社数で言って峠は越しましたが)や、主要国の経済統計など、それなりにあります。ただ、述べたように、今週の世界市場も主として心理に支配され、材料で市況が大きく動くことはないだろうと予想します。
ただし、米国で財政絡みのイベントが多いです。足元の市場は、トランプ政権が財政拡張的である(連邦法人減税も決定したし、巨額のインフラ投資も打ち出す構えである)、という点を、「悪い金利上昇」(財政悪化による長期金利上昇)要因だとして、懸念する見解が支配的です。
この点について、先日筆者があるテレビ番組に出演した際、CMの間にキャスターの方が、「米国株は、ついこの前まで、減税やインフラ投資で景気が良くなると好感して株価が上昇していたのに、今は財政赤字が膨らんで長期金利が上がり、株価が下がってしまうと懸念していて、これはおかしいですよね」と筆者に尋ねられました。極めて正しい指摘だと思います。
ただ、市場は、上がっている時はどんな材料でも市況が上がる方向に解釈し、下がっている時は何でも下がる材料だと懸念する、というものです。市場とは、(長期的には正しい方向へ動いても)短期的にはいくらでも(上にも下にも)行き過ぎるものだ、と、あきらめるしかありません。
さて、そうした米国での財政関連のイベントとは、まず2/12(月)に、予算教書が公表されます。この予算教書は、財政関係の政策の方針を示すものです。そのため、トランプ大統領が唱えるインフラ投資の拡大については、予算教書に盛り込まれ、金額等が明らかになると見込まれます(※編注:原稿執筆時点2018年2月11日。12日に公表された予算教書では、インフラ投資に2000億ドルの拠出が盛り込まれることが明らかにされました)。1/30(火)の一般教書演説(財政以外も含めた全般な政策方針を語る)では、10年間で1.5兆ドル「以上」だと述べていますが、この金額には民間による投資分も含まれています。
また、2/14(水)には、ムニューシン財務長官が、上院財務委員会で、予算案について証言する予定です。財政赤字膨張に対する懸念が市場に広がっているため、懸念を抑制するよう努める(たとえば、減税を行なうと税収が減るように思われるが、減税が景気を刺激して、結果として税収が増える、といったような試算を示すなど)と見込まれます。
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