貴乃花親方が理事選で惨敗した要因の1つは、投票方式が直前で「記名式」に変えられたことだろう。不思議なことに、それを伝えるメディアや専門家はごく一部だ。(『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』近藤駿介)
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なぜ直前に「記名投票」に変えられた? 絶望的になった相撲改革
「僅か2票」の背景
自身への支持票を得られていない中で日本相撲協会の理事選挙への出馬に踏み切った貴乃花親方だったが、他の一門の固い結束によりサプライズを起こせなかった。
注目されたのは、貴乃花親方が獲得できた票が僅か2票の惨敗だったこと。若手親方の中には「隠れ貴乃花支持者」がかなりおり、落選するにしてももっと票を得るだろうと言われていたが、終わってみれば自身の票以外には1票しか入らなかった。それも、貴乃花親方の長男の嫁の父親で親戚関係である陣幕親方だと見られており(他の見方もある)、実際には貴乃花親方に対する支持は全く広がらなかった結果となった。
貴乃花親方が惨敗した理由としては、造反を警戒した他の一門が引き締めを強めたことや、理事解任理由にもなった日馬富士による貴ノ岩に対する暴行事件に対して頑なに発言を拒み、協会執行部への非協力的な姿勢を取り続けたことが、他の親方衆の理解を得られなかったことなどが挙げられている。
専門家たちは「貴乃花親方の求心力低下」を主張するが…
相撲の専門家の間では、結果的に貴乃花親方が僅か2票しか獲得できずに惨敗したことで、今後貴乃花親方は角界と貴乃花一門内両方で求心力を失っていくだろうという見方が強まっているようだ。
相撲界を長年取材してきた専門家たちの目には貴乃花親方の求心力が低下していくことは必至のように映っているかもしれないが、果たしてそうなるだろうか。
注目された理事選で貴乃花親方が僅か2票しか得られなかったという衝撃的な結果が出た直後であることから、「貴乃花親方、惨敗」という結果に必要以上に注目が集まってしまっているが、貴乃花親方の主張が見直されるまでそれほど多くの時間は必要ないかもしれない。
理事選報道に感じる違和感
今回の理事選の報道を見ていて奇異に感じることは、理事選の投票方法が事前に報道されていたものと異なっていた可能性が高いことがほとんど報道されていないことである。
一門と無所属の親方を合わせて基礎票が11票しかない貴乃花一門が阿武松親方を理事候補として立てることを決めたなかで、貴乃花親方が「1票でいい」という覚悟を持って理事選に打って出たのは、少なからず他の一門の「隠れ貴乃花支持者」からの支持が得られる可能性があると踏んでいたからのはずである。
貴乃花親方がそう考えるに至った前提条件は、理事選が「無記名投票」で行われることだったはずだ。
「無記名投票」というのは、予め候補者の名前が印刷されている投票用紙に〇を付けていく投票方法である。この投票方法の長所は、誰がどの候補者に投票したのかを特定し難く、投票者の自由な意思が反映されやすいことである。
日本相撲協会の理事選でも2010年からこの「無記名投票」方法がとられて来ており、今回の理事選でも同様の方式で行われると思われていた。少なくとも、メディアに連日登場していた相撲界の専門家達もそうした前提でコメントを出していた。
しかし、今回の理事選は「記名投票」で行われたようである。
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