記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2018年1月18日号より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです
水道料金高騰、水質悪化、断水…数えたらキリがない民営化の弊害
国民不在で進められてきた「水道民営化」
いよいよ、「水道民営化」法案(水道法改正)が、1月22日から始まる通常国会に上程されます。この法案がいかにひどい考え方にもとづいているかは、すでにこのメルマガで、三橋貴明さんや島倉原さんが詳しく指摘しています。
https://38news.jp/economy/11490
https://38news.jp/economy/11500
要するに、地方財政が逼迫(ひっぱく)しているために、民間企業に上下水道の運営権を売却し(コンセッション方式)、その売却益を、自治体が政府から借りている負債(財政投融資)の返済に前倒しで充当させるというものです。
しかもそのお金も、政府は支出の増加に充てるのではなく、国債の償還に充てるのだろうと、島倉さんは鋭く見抜いています。そうに違いありません。
この法案では、運営権売却に際して地方議会の議決が不要となるほか、運営企業の利用料金設定も届け出制にすると謳われています。つまり、民間企業が勝手に料金を決め、勝手に管理運営を行うわけです。
財政が逼迫していない東京都までも売却を構想中です。また、すでに多摩地域では、昭島市、羽村市、武蔵野市以外の市町では水道部門がありません。水道業務を行っているのは、PUE、東京水道サービスといった、東京都水道局の外郭団体である株式会社です。
http://suigenren.jp/news/2017/03/10/9066/
水道の民営化については、第二次安倍政権成立後間もない2013年4月に、麻生財務大臣がワシントンで、「日本のすべての水道を民営化する」と言い放って周囲を驚かせたのが有名です。
4年後の2017年3月には、その言葉通り、水道民営化に道を開く水道法改正が閣議決定されました。このように、国民不在のまま、水道民営化路線は着々と進められてきたのです。
日本の水道が危険に晒される
水道民営化が、電力自由化、労働者派遣法改正、農協法改正、種子法廃止と同じように、規制緩和路線(グローバリズム)の一環であることは言うまでもありません。
これにより、外資の自由な参入、水道料金の高騰、メンテナンス費用の節約、故障による断水、渇水期における節水要請の困難、従業員の賃金低下、水質悪化による疫病の流行の危険などがかなり高い確率で起きることが予想されます。
ちなみに現在の日本の水道管はあちこちで老朽化していて、これを全て新しいものと取り換えるには、数十兆円規模の予算がかかると言われています。
しかしいくら金がかかろうと、国民の生命にかかわる飲料水が飲めなくなる状態を改善することこそは政府の責任でしょう。それを放置して、すべて民間に丸投げしようというのです。正しく公共精神の放棄です。
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