フェドコイン(Fedcoin)は、ビットコインよりビッグだ!
各国の中央銀行が、こぞってビットコインの規制に乗り出そうとしているのは、中央銀行独自のデジタル通貨を普及させるには、事前にこれと競合するビットコインなどの暗号通貨の使用を制限することが必要との判断に基づくものであると、主流メディアは考えているのです。
実際に動き出した暗号通貨革命を潰すことは、政府やグローバルな中央銀行による干渉を強化することによって可能です。
残念ながら、ビットコイン、イーサリアム、ライトコインその他の暗号通貨が世界的に注目を集めている今、合法的な介入が困難であれ、その強権力が発動することは避けられない状況となっています。
12月18日、ワシントンポストは、デューク大学のフュークア・ビジネススクール(Duke University’s Fuqua School of Business)の金融学教授、キャンベル・ハーヴェイ(Campbell R. Harvey)氏による「ビットコインはビッグだ、しかし、フェドコインはさらにビッグだ」と題した意見書を発表しました。
各国政府が規制に傾く中で、このタイミングで記事のタイトルに「Fedcoin」という連邦政府の法定デジタル通貨の名前を含めたのは決して偶然などではなく、当然のことながら明確な意図があります。
ハーヴェイ教授の意見書の要旨は、「世界中から紙幣が廃止されるまでは、もはや時間の問題」ということと、キャッシュレス社会の実現に向けて「Fedcoin」のような「法定デジタル通貨のいくつかのバージョンが登場することは、もはや避けられない」ということです。
ワシントンポストの記事の内容は以下のとおりです。
――紙幣が、段階的にであれ、廃止されるのは時間の問題となってきた。現実に、スウェーデンは、5年以内に現物の紙幣を取り除く可能性がある。
大部分の中央銀行は、将来のデジタル通貨の原動力となるために、テクノロジーの開発に取り組んでいる。
(FRBの場合)デジタルドルに切り替える目的は、偽造紙幣を駆逐する以上に別の理由がある。
どんなにお金を引き出そうとしても、大半のATMは、一回につき出金額が20ドルに制限されているものが多い。
にもかかわらず、流通している米ドルの79%は100ドル紙幣なのだ。さらに、50ドル紙幣まで含めると、それは公式に発表されている通貨発行総額の実に85%にも及んでいる。
米国人の日常生活は100ドル紙幣や50ドル紙幣であふれかえっていなければならないはずが、実際はそうなっていない。
では、これらの高額紙幣はどこに行ったのだろうか? そう、ブラックマーケット!
警察が有名な麻薬王「エル・チャポ」として知られるホアキン・グスマン(Joaqu?n Archivaldo Guzm?n」)を初めて逮捕したとき、主に100ドル紙幣を含む2億ドル以上の現金預金があることが発覚した。
現物の現金には匿名性があるという有利な利点がある。
いっぽう、ブロックチェーン・ベースの法定デジタル通貨の場合、すべての取引が政府の「元帳」に自動的に記録されるため、犯罪者がお金を貯蓄することをはるかに困難にする。
つまり、その取引が違法とみなされた場合、取引の当事者が誰なのかを特定することができるのだ。これは、法定通貨ではないビットコインにも当てはまる。
なぜなら、ブロックチェーンこそが、その「元帳」なのだから。
ビットコインが不正取引に利用されているというネガティブな報道が後を絶たないにもかかわらず、これを頻繁に使って非合法取引を行っている犯罪者は、すべてのトランザクションが記録されていることを理解していないようだ。
アンダーグラウンドの闇経済を撲滅させる……これが中央銀行が法定デジタル通貨を発行する大きな理由としてコンセンサスを得ている。
しかし、政府が国家の暗号通貨を法律で定めるには、もう一つの重大な理由がある。
それは、中央政府が経済を管理するための金融政策の力を強化することができる、ということである。
現在、連邦準備制度理事会(FRB)は、何度か利上げを仄めかしてはいるものの、先行きの厳しい経済情勢を予想してなのか、依然として低金利に据え置いている。
FRBは実質的には、ゼロ・バウンド(ゼロ金利制約)に制限されているのだ。
金利を上げれば、誰も想像できなような大規模なバブル崩壊が起こることは自明であり、かといって、それが良い政策であろうとなかろうとマイナス金利を課すことも、金融機関の体力を削ぐことになるので困難な状況だ。
ところが、フェドコイン(Fedcoin)のような国家の法定デジタル通貨を使えば、経済を刺激する代替戦略として、ミルトン・フリードマンが提唱したかの有名な “ヘリコプターマネー”によって操作することが可能になるのだ。
それは、ベーシックインカムで議論されたように、たった1行のコードを書き換えるだけで、すべての人の財布に即座に1,000ドルずつを振り込むことが可能になる。
こうした概念は夢と考えられていたが、今や、我々はビットコイン人気の急上昇をリアルタイムで見せられることによって、それが現実に起こり得ると認識を改めている。
今日、この技術は金(ゴールド)の現物を所有するのと同じように、一元的な集中管理の手を離れて分散化を可能とするばかりでなく、誰にも制御されることなく大量のトランザクションを処理する能力を持っている。
対照的に、中央集権的なフェドコイン(Fedcoin)は、FRB下位のさまざまな連邦準備銀行に権化されるだろう。
フェドコイン(Fedcoin)もまた、マネーサプライの中央管理を可能とするだけでなく、トランザクション効率の大幅な向上をもたらすことになる。
こうした法定デジタル通貨を使用した取引においては、現行の銀行システムよりも迅速かつ低コスト、かつ安全にすべての取引を完了することができる。
……したがって、連邦準備制度がいつか独自の暗号通貨を導入するとなれば、ビットコインや他のデジタル通貨との競争が激化する。
実際に、フェドコイン(Fedcoin)が、そうした競争を望んでいるかどうかは問題ではなく、連邦準備制度理事会(FRB)は、フェドコイン(Fedcoin)にとって良好な環境をつくるために、ビットコインへの規制を強める立場にあることから、ビットコイン市場関係者は警戒すべきである。
世界がキャッシュレス社会に移行するにつれて、ブロックチェーン技術を利用する中央銀行の考え方には誰に対しても反論の余地を与えない――
今のところ、ビットコインのトランザクションは慢性的な渋滞に悩まされてはいるものの、なんとか動いてはいます。そこには、どんな干渉も必要ありません。
しかし、最大の懸念は、何者かによって人工的、かつ計画的に「暗号通貨の危機」を作り出すことができる、ということです。
そうしたリスクが利用者に及ばないようにするには、政府が責任を持つフェドコインのようなバージョンを導入することです。
暗号通貨を他へ送金する際に、間違った操作によってコインが消失してしまった経験を持っているユーザーであれば、政府が提供した「解決策」に、しぶしぶながら感謝するようになるでしょう。