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2018年の日経平均は明確な戻り高値確認後、当面浮上できない可能性あり=伊藤智洋

日経平均はまだ戻り高値23382円を越える可能性を残していますが、そうなったとしても上昇の流れへは入らずに、いったん上値を抑えられる動きになりそうです。(『少額投資家のための売買戦略』伊藤智洋)

※本記事は有料メルマガ『少額投資家のための売買戦略』2017年12月24日号を一部抜粋・再構成したものです。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。今月配信済みバックナンバーや本記事で割愛した全文(プラチナ、日経平均株価の今後のシナリオ)もすぐ読めます。

プロフィール:伊藤智洋(いとうとしひろ)
証券会社、商品先物調査会社のテクニカルアナリストを経て、1996年に投資情報サービス設立。株や商品先物への投資活動を通じて、テクニカル分析の有効性についての記事を執筆。MS-DOS時代からの徹底したデータ分析により、さまざまな投資対象の値動きの本質を暴く。『チャートの救急箱』(投資レーダー社)、『FX・株・先物チャートの新法則[パワートレンド編]』(東洋経済新報社)など著書多数。

限られる上値余地。新たな上昇の流れが始まるとは判断しにくい

1970年から2015年までの日経平均株価

12月22日に18年度の予算案が閣議決定されました。社会保障費が膨らみ、過去最大規模の97兆7000億円もの歳出額になっていることが話題になっています。

前回メルマガで、政府支出を増やすか、通貨供給量を増やすかのどちらかを実行することで、株式市場では、市場全体の下値を支える、あるいは市場全体を押し上げる効果があらわれると書きました。

一方で、金融、財政を引き締めると、それまでの株価が上昇していた場合、値幅の大きな下げを演出する機会を投機に提供することになります。

<図表1:1970年代の日経平均>

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<図表2:1980年代の日経平均>

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<図表3:1990年代の日経平均>

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<図表4:2000年代の日経平均>

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<図表5:2015年までの日経平均>

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図表1~5は、上段が1970年から2015年までの日経平均株価月足中段が決算での一般会計の歳出額(財務省のHPを参照)、下段がマネタリーベース(日銀のHPを参照)です。

これを見ると、図表1と2の1970年から1988年までの期間は、歳出を拡大し、通貨供給量を増やし続けていることがわかります。1970年代は、米国が株価のもちあい期でしたが、日本株が上昇し続けています。1989年以降、消費税の導入で財政を引き締めて、総量規制、BIS規制等で銀行が貸し渋る方向へ舵をきったことで、株価の下落が始まります。

91年、92年は、株価の急落場面で、財政、通貨供給量とも横ばいから減少となったことで、株価が92年に一気に10000円を割れるまで下落しています。その後、財政と金融の両方で上向きに推移していることで、97年など、株価が堅調に推移しています。

図表4で97年以降の動きを見ると、97年の消費税引き上げのあと、株価が大きく落ち込んでいますが、98年、99年は、財政と金融の両方を増やしたことで再び上昇しました。

2000年以降も、同じように、財政金融の両方を増やす場面で株価が上昇して、どちらか、あるいは両方を減らすと、株価が大きく下げていることがわかります。

過去最大規模の「財政支出」でさらなる高値を目指す?

メディアで騒いでいるように、過去最大規模の財政支出なら、日銀が緩和継続(来年の日銀総裁人事で現状の変化を求めると考えにくい)ですから、株式市場全体がさらなる高みを目指すと見たくなるところです。

しかし、実際には、過去最大規模の歳出というわけではないようです。財務省のホームページで見ることのできる決算額での一般会計の歳出額は、2009年の100兆9734億2438万8000円が過去最高額となっていて、2012年以降、安倍政権に入ってからもこの額を越えていません。

ちなみに、決算ベースでは、13年が約100兆円、14年が約99兆円、15年が98兆円となっていて、09年以降、横ばいから下がり気味に推移していますが、予算の段階で数字を追うと、以下の通り、徐々に拡大しています。

  • 13年度予算、92.6兆円
  • 14年度予算、95.8兆円
  • 15年度予算、96.3兆円
  • 16年度予算、96.7兆円
  • 17年度予算、97.4兆円
  • 18年度予算案、97.7兆円

13年、16年と規模の大きな臨時経済対策を実行しても、09年を越えていないのですから、現時点で言えば、来年が過去最大規模の年にはならないと推測できます。

株式市場への効果という意味で言えば、最低限の下値を支える程度であり、市場全体をさらなる高みへ押し上げる期待は持てません。

日本の株式市場が投機的な動きになっていないなら、インフレを目指す政策に変更がないわけですから、株式市場は高値圏で安定するという見方になります。

しかし、日経平均株価指数は、先物市場で取引されているため、投機の対象となって、毎年、4000円幅程度の振れがあらわれる市場になっています。

株価が常に上昇し続けるためには、本年よりも来年、来年よりも再来年、投機にまく餌の量を増やしてゆく必要があります。今年の9月から11月にかけての上昇は、明らかに投機的な動きですから、来年、さらなる餌がなければ、上げた分を縮小する形で変動幅が消化される可能性が大きいと言えます。

前回メルマガでは、2019年10月の消費税引き上げを考慮すれば、上げられる期間が2018年しかないと書きましたが、そうならず、2018年が10月頃まで、下値を試す流れになることも考えておく必要がありそうです。

Next: 日経平均は明確な戻り高値確認後、当面浮上できない可能性がある

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