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中身なきトランプ演説は想定内。この株高・ドル高はなぜ起こったか?=馬渕治好

馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』は、めまぐるしく変化する世界の経済や市場の動きなどについて、ブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏が分かりやすく解説するメルマガです。今回は、トランプ米大統領の議会演説やその後のNYダウ2万1000ドル突破をうけて配信された号外をご紹介します。

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2017年3月2日号外の抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。通常号は毎週日曜日配信です。

このまま株価は上がり続けるのか?それとも…馬渕治好氏が解説

連銀高官の「援護」で足元の相場は米株高・ドル高に

トランプ大統領が、米国時間2/28(火)夕(日本時間では3/1・水 午前11時頃から)議会で演説を行ないました。内容は予想通り、経済政策について具体体は乏しく、税制改革を行なう旨や1兆ドルのインフラ投資という文言は含まれましたが、それ以上のものはほとんどありませんでした

前号のメールマガジン(2/26・日 付)では、そうした演説を受けて、具体策がないと本当に失望してしまう投資家や、予想通りだと考えるが失望したふりをして売りを出す投資家により、米株価や米ドルは反落すると懸念していましたが、実際には逆に米株高・米ドル高となりました。ニューヨークダウ工業株指数は前日比で303.31ドル幅上昇(1.46%高)し、米ドルの対円相場は一時114円を超えました。

こうした米国市場における楽観的な動きについては、トランプ演説が、別に良いこともなかったが悪いこともなかったとして、また、不透明感の強いイベントが通過した安心感から、株の買いにつながると考えた投資家が多かった、と解説されます。

ただ、そうした解説は株価が上がった後付けでなされているものであって、実際にはトランプ演説で株価が下振れするだろうと見込み、先物などの売り持ちをしていた向きが、悪い話もなかったので買い戻したところ、株価上昇に弾みがついてしまった、というところだろうと、推察しています。

それ以上に、結果的に連銀高官の発言が、相場の「援護射撃」になった、という面があります。

2/28(火)に、まずサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁が、3月の利上げは「かなり真剣に検討される」と発言しました。同総裁は、タカ派(利上げに積極的)ではなく、中立派とみなされているため、市場が反応しました。

また、ニューヨーク連銀のダドリー総裁は、CNNテレビのインタビューで、「引き締めの根拠はより説得性を増している」と語りました。特にダドリー氏の発言については、ニューヨーク連銀総裁は常にFOMCで投票権を持つメンバーであるため、発言がなされた日本時間3/1(水)午前6時頃から、米ドル高・円安が大きく進み始めました。

FF金利先物市場における3月利上げの織り込み確率は、先週まで3割程度にとどまっていましたが、両氏の発言を受けて、一時は6割を超える動きを見せました。こうした金利先高観の台頭が、米株式市場においては、銀行の貸出金利が上昇し採算が改善する、との思惑を生じ、銀行株が大きく上昇しました(昨日3/1・水のS&P500金融株指数は、前日比で2.84%上昇し、S&P500指数全体の1.37%上昇を上回っています)。

また、利上げを素直に解釈すれば、米国経済が極めて強いから利上げが可能なのだ、と考えられますので、その点でも(米ドル高はもちろんのこと)米株高の材料だと言えるでしょう。

こうした米株高・米ドル高を受けて、シカゴの日経平均先物(円建て)は、19590円近辺で推移しています。本日3/2(木)の東京市場では、日経平均株価は1/4(水)の大発会の終値ベースの高値である19594.16円、並びに翌1/5(木)のザラ場ベースの高値19615.40円を試すような上昇がありそうです。
(※編注:3月2日の日経平均株価終値は前日比171円高の1万9564円、高値は9:16につけた1万9668円だった)

ただし、今後当面(3月半ばにかけて)は、内外株価や外貨の対円相場は、様子見ないし軽い下押しの懸念があると考えます。その理由は、次の通りです。

Next: 3月半ばにかけ複数の懸念が存在、ただし大きな問題とはなりにくそう

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