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10年で資産3倍?「グレアム流S&P500インデックス投資」の可能性を探る=東条雅彦

今のS&P500は割安ではないが、それでも「投資を見送るべき」とは言えない

1980年代はS&P500のPERが10倍前後になっていることが多く、明らかにチャンスでした。

平均株価がその水準だったら、個別銘柄で探せば、PERが5倍の優良企業も多く存在していたことは容易に想像できます。

ただ、多くの人は、「昔のこのタイミングでは買い場でした」という過去の栄光話を聞かされても困ってしまうはずです。知りたいのは「今、買っても大丈夫なのか?」です。

そして、グレアム流の観点では、残念ながら今のS&P500に「大きな安全域がある」とは言えません

<近年の状況>

年   PER
2012年 14.87倍
2013年 17.03倍
2014年 18.15倍
2015年 20.02倍
2016年 22.18倍
2017年 26.57倍(2017/2/26時点)

個別銘柄で投資する場合、割安な銘柄を見つけて、投資できます。しかし、インデックス投資の場合、「平均株価」に投資するため、そのような銘柄選定は不可能です。

シーゲル博士の「景気後退を予想することは不可能だから、とにかく投資を開始して、複利の力で資産を増やそう」という主張は正しいと言えます。

1998年の10年後の2008年に、リーマン・ブラザーズが倒産することを予見できた投資家はいませんでした。だから、1998年、1999年にS&P500に投資して、10年後にマイナスリターンになったのは仕方のないことだったのです。

前回の内容と重複しますが、インデックス投資では、投資期間を長くすればするほど「安全域」が拡大していきます。

<インデックス投資における最低平均年利の推移>

5年保有:-2.35%
10年保有:-1.35%
15年保有:+4.24%
20年保有:+7.68%
25年保有:+9.15%

最初の10年の投資では、マイナスのリターンになる可能性もあります。元金100万円が毎年-1.35%ずつ下落した状態が10年続くと、10年後には87万円になってしまいます。

でも、そこから我慢して、さらに10年保有を続けた場合(合計20年保有)、元金100万円は439万円に増えます(平均年利+7.68%)。

運悪く1998年、1999年に投資を開始した人でも、ひたすら保有し続けば大きなプラスの収益を手にできる、ここがインデックス投資の凄いところです。

「グレアム流インデックス投資」を実践しにくい理由

グレアムの「安全域」という概念は、すべての投資で使える考え方です。しかし、インデックス投資にグレアムの理論を当てはめようとすると、投資チャンスが極端に少なくなります。なぜなのでしょうか?

その理由は、S&P500が米国を代表する500社の平均株価だからです。500社の中には割安の銘柄もあれば、割高の銘柄も存在しています。平均株価では、その歪みが平均化されて、かき消されてしまうのです。

インデックス投資でグレアムのいう安全域を確保できるケースは、S&P500を構成する500社が同時に割安になる時しかありません。逆にこういう時に出くわしたら、「絶対にチャンス」なのは言うまでもありません。

ただ、長い人生においても、そういうチャンスは数回しかありません。グレアムは、インデックス投資に関して次の言葉を残しています。

大半の投資家は個別銘柄など選ぶ必要などないということを、繰り返し申し上げておいたほうがいいだろう。

銘柄選びをしてみようという人のほとんどが、思っていたほどうまくできないことを悟らされる。

運のいい人は早くからそのことに気づいているが、運の悪い人は気づくまでに何年もかかる。

自分でうまく銘柄選びができるのは、ほんの数パーセントの投資家にすぎない。

もしかしたら、みんながインデックスファンドの力を借りるのが理想なのかもしれない。

実は「バリュー投資の父」グレアムも、市場平均に勝つことの難しさをよく理解していて、バフェットと同じように、一般の人にはインデックス投資をオススメしていたのです。

今回のまとめ

シーゲル博士の主張もグレアム氏の主張も、間違ってはいません。それぞれに良し悪しがあるという話です。最後に、それぞれのメリットとデメリットを下記にまとめてみましょう。

<グレアム流の投資手法>

メリット:
S&P500のPERが10倍以下(妥協しても15倍以下)の時に投資を開始すると、10年で資産を3.5倍以上に増やせる。

デメリット:
投資するタイミングが極めて少ないため、株価が割安になるのを待っている間、機会損失になる。

<シーゲル流の投資手法>

メリット:
いつ投資を開始しても15年保有し続ければ、ほぼ100%の確率で利益を得られる。タイミングを問わずに投資を始めるので、機会損失がない。

デメリット:
S&P500のPERが20倍以上のタイミングで投資を開始すると、確率は低いが、10年後に資産がまったく増えない(むしろ減る)ことがある(その場合は保有期間を15年に引き延ばせば、収益がプラスになる)。

なお、現在(2017/02/25)のS&P500のPERは26.57倍になっています。運が悪ければ、10年後に資産が減ってしまう可能性がある水準だと言えます。

それでも、投資期間を15年まで引き延ばせば、かなりの高確率(過去の統計では100%)でプラスの収益が得られるというのが、インデックス投資最大の利点と言えるでしょう。

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ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』(2017年2月26日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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