PERの推移から「S&P500の割安・割高」を判断できるのか?
グレアム的な観点で、S&P500のPERの推移を確認していきましょう。
・現在PER=青色の棒グラフ
・10年後、何倍?=赤色の棒グラフ
「現在価値」は、1970年1月1日にS&P500に1ドルを投資した資産価値(ドル)を示しています。「現在PER」は青色の棒グラフで示し、「10年後、何倍に増えたのか」は赤色の棒グラフで表現しています。
まず視覚的に確認していただきたいのですが、「青の棒グラフが短いほうが、赤の棒グラフが長くなっている」という点に注目してください。
年代別にざっくりとした傾向を解説していきます。
【1970年代】
(PER)
前半はPERが少し高く、後半はPERが低かった。
(10年後の資産)
前半は2~2.5倍、後半は3.6~5倍に増えた。
【1980年代】
(PER)
PERは全体的に低い傾向にあった。
(10年後の資産)
概ね3.5~5倍に増えた。
【1990年代】
(PER)
1980年代に比べてPERが高い傾向にある。1999年にはPERが32.92倍にまで増えた。(=ITバブル)
(10年後の資産)
2倍ぐらいに増えた。1998年と1999年は資産が逆に減った。
【2000年代】
(PER)
PERが20倍前後に推移している。2002年はITバブル崩壊の影響、2009年は前年のリーマンショックの影響でPERがそれぞれ46倍、70倍に跳ね上がっている。この2つは異常値である。
(10年後の資産)
2000年、2001年に投資を開始した場合、資産はほとんど増えない。
このようにして見ると、グレアムの「PERが低い方が大きな利益を得られる」という考えは、概ね正しいと判断できます。PERが10倍以下でS&P500に投資した場合、すべてのケースで10年後の資産は3倍以上に増えていました。
1980年代が投資するのにとても良いタイミングだったのは、S&P500が割安に評価されていたことも1つの要因でしょう。
あと、このPERを見る上で注意すべき点があります。
それは、大幅な景気後退(バブル崩壊、金融危機等)があった場合、赤字になる企業が続出するため、利益が大きく落ち込むということです。そのため、PERが必要以上に上昇して異常値になるのです。
2001年、2002年に起きたITバブルの崩壊と、2008年のリーマン・ショックの影響で、株価が暴落しています。
景気後退によってPERが突如、割高(40倍、70倍)になった場合、割高ではなく、逆に「割安」になります。
以下に整理してまとめます。
<通常時のPER>
10倍以下⇒割安(投資すべきタイミング)
20倍前後⇒適正(グレアム流では投資を控えるべきタイミング)
30倍以上⇒割高(グレアム流では絶対に投資してはいけないタイミング)
<大幅な景気後退(バブル崩壊、金融危機)直後のPER>
40倍以上⇒割安(PERの値にかかわらず、逆に投資すべきタイミング)