人工知能(AI)は雇用を削減する技術革新だ。1日に8時間しか働けないのに文句を言い、高賃金を要求する「人間」はどんどん淘汰されていく。この脅威に打ち勝てるのは一握りの投資家だけだ。どういうことか?(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
AIが創造するディストピアを生き残るのは臆病な投資家だけである
絶望の中に放り込まれた人類
コンピュータが急激に進歩し、今まで不可能だったことができるようになっている。
たとえば、コンピュータは写真を判断して何が写っているのかを判別することができるようになった。それが人間なのか動物なのか、男性なのか女性なのか、年齢はおおよそ何歳くらいなのかを判断する。
コンピュータは、写真に写っている人物が泣いているのか笑っているのか怒っているのかも判断することができる。
コンピュータは自ら絵を描くことができるようになり、自ら歌を歌うようになり、自ら文章を書くようになった。欧米では、すでに日々の株式情報やスポーツや天気の記事はコンピュータが自動的に書いている。
さらにコンピュータは人の言葉を理解して答えを出してくれるようになり、疑問に答えてくれるようになっている。翻訳もより高精度になり、今後は車の運転もしてくれるようになり、病気の診察までしてくれるようになる。
コンピュータは凄まじく「進化」している。この進化の根底にあるのが人工知能(AI)の進化である。
私たちは人工知能による巨大な技術革新の中に放り込まれた。これからの10年は、今までの10年とは比較にならないほど社会と生活が激変する。
人工知能は、まさしく雇用を削減する技術革新だ
人工知能は私たちの生活を便利にする。今まで人間がやるしかなかった作業を人工知能が担ってくれるようになり、それを人間では到底かなわないような正確さと早さでやってくれるようになる。
そして人工知能は、人間のように8時間しか働かないどころか、24時間365日に渡って仕事をしてくれるのだ。それは、素晴らしい社会の到来のように見える。
もう面倒なことはすべて人工知能に任せておけばいいのだ。それで人間は楽ができる。
しかし、それを「素晴らしい」と思うのであれば、物事の一面しか見ていないことになる。冷静に考えれば、逆に凄まじく危険な社会が来ていると危機感を覚える人もいるはずだ。
何が危険なのか。
人工知能が今まで人間しかできなかった仕事をできるようになるということは、もはやその仕事に人間は要らなくなるということでもある。つまり、人工知能は人間の職場を次々と奪っていくのである。
小売店の販売員も、カウンターも、会計士も、セールスマンも、秘書も、レジ打ちも、ウェイトレスも、銀行の帳簿系も融資系も、トラック運転手も、コールセンターの人員も、タクシーの運転手も、上級公務員も、ビル管理人も、みんな仕事を失ってしまう。
サラリーマンの仕事の内訳を見ても、一般事務も受付もデータ入力も中間管理職も次々と仕事を失っていく。
人工知能は、まさしく雇用を削減する技術革新だったのだ。
2017年12月4日、フォーブスは米マッキンゼーの調査部門の報告として「自動化で雇用を失う人、2030年までに日米で1億超える可能性」との懸念を記事にしている。
日米だけではない。中国では約2億3600万人の雇用が失われ、インドでは1億2000万人もの人の雇用が失われる。
仕事が失われたら新たな仕事に就けばよいと簡単に言う人もいる。しかし、人工知能によって全般的に人間が行う仕事が減る上に、新たな技能を身につける必要があったり、まったく新しい分野での訓練を受ける必要がある。それは、口で言うほど簡単なことではない。
介護の仕事などは最後まで残ると言われているのだが、では人工知能で失職する確率が高い弁護士や中央官庁職員など上級公務員などが介護の仕事に転職できるだろうか。