学校法人森友学園が大阪府豊中市の国有地を評価額より大幅に安く取得した問題が、日々大きくなってきている。
邪推かもしれないが、テレビの報道をみていると、野党やメディアは「触れてはいけない部分」に敢えて踏み込まず、「国有財産を安く売却したのはけしからん」と当たり前の主張を繰り返すことで、今回の問題を、適正な売却価格や政治介入「だけ」に矮小化しようとしているのではないかと感じてしまう。
というのも、かつてゼネコンの土木技術者だった筆者は、森友学園側の証言に大きな違和感を覚えるからだ。国交省の人間が、筆者と同様の違和感を抱かないことは考えにくい。(『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』近藤駿介)
プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。
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掘り起こしてはならない「不都合な真実」が学校敷地に埋まっている?
瑞穂の國記念小學院(安倍晋三小学校)問題
学校法人森友学園が大阪府豊中市の国有地を評価額より大幅に安く取得した問題が、日々大きくなってきている。
問題になっているのは、不動産鑑定士の評価額が9億5600万円であった国有地が、森友学園に鑑定評価額の僅か約14%の1億3400万円で売却されたこと。鑑定評価額から8億2200万円も安く売却された理由とされているのは、小学校の建設工事中に地中から地下埋設物が見つかったこと。国土交通省はその地下埋設物の撤去費用を8億2200万円と見積もり、それを鑑定評価額から差し引いた1億3400万円を国有地の「適正な時価」とした。
安倍昭恵総理夫人が、森友学園が新設する小学校の名誉校長になっていたことなどもあり、野党を中心に、この異例の国有地売買に政治的関与がなかったのかを追及する声が強まってきている。これまで安倍自民党一強時代の前に為す術のなかった野党が、久しぶりに訪れたチャンスをどのように活かすのかが注目されるところ。
元土木技術者の私が覚えた「違和感」
森友学園に関する報道で最初に奇異に感じたことは、校舎や体育館を建設するため9.9mの杭を打っていたところ、新たに廃材や生活ごみなどが見つかったため、最大で深さ9.9mまで土を掘り起こし、廃材などを撤去・処分したという説明。
この説明に違和感を覚えたのは、筆者がゼネコン(総合建設業)の土木の技術者として携わった、約30年前の浄水場の拡張工事に伴う杭打ち工事を思い出したからだ。
公共工事であったこの杭打ち工事で、施工開始後すぐに遭遇したのが想定外の地下埋設物だった。それも廃材やゴミではなく、戦前に作られたと思われる鉄筋コンクリート造りの強固な地中壁だった。高さ2m程度の地中壁が工事予定地にくまなく広がっていたため、杭打ち工事をするために、まずそれらを全て撤去する必要に迫られてしまった。
しかし、単に施工の障害となる地中壁を壊せばいいという問題ではない。地中壁が埋まっていることが想定されていなかったということは、請負った杭打ち工事の契約金額の中に地中壁撤去費用は含まれていなかったということ。したがって、国からその撤去費用を引き出す必要があったのだ。
まずやらなければならなかったことは、土砂を取り除いて地中壁を掘り出し全体像を確認することだった。敷地内のどの範囲に、どの程度の規模の地中壁が埋まっているのかを把握しなければ撤去計画も立てられないし、どのくらいの費用が掛かるかも算定しようがなかったからだ。
表土を取り除き全体像が大体見えた後は、その規模を裏付けるための証拠写真を何枚も撮り、測量して図面を作成し、それを基に撤去する地下埋設物の量を算出していった。当然こうした一連の作業は、施主である建設省(現国交省)の担当役人も立ち会いのもと進めていった。
こうした予定外の工事が必要になった場合の契約は、一般競争入札ではなく付帯工事として、元々の工事を請け負っていた業者との随意契約となる。そして、撤去する埋設物の範囲や量を把握することは、この随意契約の請負金を決める際の最も重要な要素となるものだ。それがないと、撤去費用を全額みてもらえない可能性があるからだ。
こうした経験に基づいて考えると、豊中市で問題になっている件は、国有地処分の権限は財務省、地下埋設物撤去の見積もりは国交省という担当官庁が違っていたという縦割り行政の弊害があったにしても、国交省の対応は余りにも杜撰過ぎる観は否めない。
国交省の人間が森友学園側の証言を聞いたら、筆者と同様に違和感を覚えて当然だからだ。