トランプ大統領の威光が低下し、ペンス副大統領の存在感が増しています。陣営の勢力においても、ロスチャイルド系の優勢からロックフェラーの巻き返し、ネオコンの存在感が戻ってきているように見えます。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2017年2月15日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
せっかく仲良くなったのに…急速に立場を失うトランプ大統領
トランプ陣営に「何か」が起きている
トランプ陣営に何かが起きているようです。トランプ大統領の威光が低下し、その一方でペンス副大統領の存在感が高まっています。トランプ氏の威光低下については、その象徴例が「北朝鮮のミサイル発射」の際にフロリダの別荘で行われた会見でのトランプ氏の慌てぶりと、大統領令の連邦控訴裁による棄却とその後の対応に見られます。
これまでの北朝鮮のミサイル発射・核実験の裏では、米国の意向が伺われ、日本や周辺国に不安を持たせることで軍事費を拡大して米国軍事産業のビジネスにつながる事案が多く、米国は涼しい顔をしていました。しかし、2月11日のトランプ大統領の会見場での表情には、何か落ち着かないものを感じました。
移民難民を制限する大統領令に連邦地裁から「待った」がかかり、控訴裁もトランプ大統領の訴えを棄却しました。最高裁まで争う姿勢を見せましたが、勝ち目はありません。代わりの大統領令を出すといっていますが、スタッフが協力的でないようです。
対中国戦略でも、トランプ氏の強硬論が影を潜めています。一時は北京の共産党政権には正当性がないとして台湾国民党に接近していましたが、ティラーソン国務長官らが動いて、大きく軌道修正されています。再び台湾は中国の一部とする「一つの中国」を承認し、習近平国家主席と電話会談を行い、「両国の利益になる形を、習主席とともに築いてゆきたい」と言いました。
そこには、中国製品に45%の報復関税をかけるという威勢のいい姿はなく、為替操作国の指定も見送られそうです。かつての対中国冷戦構想は後退し、当面は習主席との間に中国の不良債権ビジネスを進める可能性があります。ここに介在するのが米国のブラック・ロックのようです。
存在感を増すペンス副大統領
不良債権ビジネスを進めるうえでは資金が必要になりますが、そこに日本の協力が必要となり、その件についても「フロリダ会談」で持ち出された可能性があります。これらの動きにはティラーソン氏の動きとともに、ペンス副大統領の存在がありそうです。日米首脳会談でも、経済協議はペンス氏主導となっていて、日本が提案した2国間協議もペンス氏の後押しが伺えます。
トランプ政権の背後で動く勢力が、どうもトランプ大統領よりも、ペンス副大統領に肩入れしている節があり、トランプ陣営でもトランプ氏やバノン補佐官が浮き始めているように見えます。トランプ大統領の安倍総理に対する「異例な厚遇」は、孤立する自分の立場に対して、安倍総理を味方につけたい思いがあったようにも見えます。
トランプ氏の威光が低下している分、ペンス副大統領の存在感が増していますが、陣営の勢力においても、ひところのロスチャイルド系の優勢からロックフェラーの巻き返し、ネオコンの存在感が戻ってきているように見えます。もっとも、彼らは当面中国攻撃よりもイランの攻勢にエネルギーを注ぐように見えます。
やや脱線しますが、東芝は苦しくなりそうです。原発勢力と石油勢力のバランスから、ウエスチングハウスの損を抑えられなくなる懸念があります。主力銀行の三井住友はロスチャイルド系です。
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