まるで意味がない「物価の下落分を反映した」実質賃金増加のカラクリ
現金給与総額の実質賃金は、16年10月以降、0%、0%、▲0.4%と、着実に落ち込んでいっています。それ以前の話として、NHKの記事にもある「物価が下落したため、物価の変動分を反映した実質賃金では0.7%の増加となりました」では意味がないのですよ、意味が!
デフレ脱却とは、「物価が安定的に上昇するが、それ以上に名目賃金が上がり、実質賃金が上昇する」状況のことなのです。今の日本は、「物価が下落し、名目賃金が上がり、実質賃金が上昇する」という、野田政権期の「停滞」と全く同じ状況になってしまっているのです。先日の「2016年インフレ率」からも分かる通り、2016年の日本はデフレ化の方向に進みました。
2016年通年の名目賃金は、現金給与総額が+0.5、きまって支給する給与が+0.2。ここにインフレ率の「マイナス分」が乗っかり、それぞれ+0.7、+0.3と、実質賃金を押し上げてしまったのです。
日本はまだ「デフレ脱却」から程遠い状況にある
整理すると、日本の2016年の実質賃金は、
と、デフレ脱却からは程遠い状況にあることが分かります。
それにしても、有効求人倍率がバブル期並であるにも関わらず、実質賃金が相変わらず低迷する。理由はもちろん、人口構造の変化(少子高齢化による生産年齢人口比率の低下)によるものですが、この「現実」を踏まえて政策が立案されない限り、我が国が「物価上昇+それ以上の名目賃金の上昇」という正しい実質賃金上昇局面に戻ることはないのではないかと懸念しています。
ちなみに、マクロ視点で実質賃金を上昇させるためには、生産性向上以外に方法がありません。そして、生産年齢人口比率の低下による人手不足の解消法は、もちろん生産性向上です。
『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年2月8日号より
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