安倍政権の背後には日本会議があるとされ、その存在がクローズアップされています。今回は、安倍政権の政策と日本会議の提言がどれくらい一致しているのかを見てみましょう。(『らぽーる・マガジン』)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2017年1月16日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
この国の将来を知りたくば「日本会議」の思想を知るべし?
ベストセラー『日本会議の研究』に出版差し止めの仮処分
中小出版社でつくる日本出版者協議会は13日、東京地裁がベストセラーの新書『日本会議の研究』(扶桑社)の出版差し止めの仮処分を決定したことに対して、「地裁の判断はあまりに粗雑で、説得力に欠ける。今回の決定に強く抗議する」との声明を出した。
声明は、出版差し止めは「『言論・出版・表現の自由』を侵し、読者の『知る権利』を奪ってしまう」と指摘。従来の司法の慎重な姿勢を「いま一度思い起こすべき」と訴えた。
扶桑社は、東京地裁が指摘した箇所を抹消した修正版を「当面の措置」として販売すると、公式サイトで発表した。
先週のメルマガで解説した『日本会議の研究』出版指し止め請求の後日談です。
ちなみに「報道の自由度ランキング」というものが毎年発表されています。2015年の順位は、1位から順番にフィンランド、オランダ、ノルウェー、デンマーク、ニュージーランドがベスト5にランクインされています。日本は72位で、前年に比べて順位が10位以上後退しています。ちなみに中国は176位、北朝鮮は179位です(国境なき記者団「報道の自由ランキング2016」報告より)。
安倍政権になって、報道の自由度が落ちたような気がしています。戦前の日本は「言論規制」があったとされていますが、軍は何も指示を出していないそうです。「ただ笑ってみているだけだった」とは当時のマスコミの人の話です。マスコミ側が自主規制で、言動を縛ったのです。会社をつぶされないように、軍の意向に沿った報道を自主的にしたそうです。無言の圧力なのでしょうか。今のマスコミも安倍政権に気を使って「自主規制」しているのでは…。
「日本会議の考えが安倍政権を作っている」は本当か?
さて、安倍政権を思想の部分で支える「日本会議」について、その生い立ちを先週号で紹介しました。今回は「日本会議の考えが安倍政権を作っているのではないか」という話です。
安倍首相が言い続けているのは「日本再生」であり、「戦後レジームからの脱却」という言葉です。この言葉に対して、左寄りの人たちは「戦前への回帰」だと指摘しています。
日本会議の立場も「戦前への回帰」を望んでいるようで、日本会議の立場と安倍首相の方向性がかなり一致していることから、「安倍政権は日本会議そのものだ」という声があがっています。ジャーナリストの人たちの間で言われている、「安倍政権の背後に日本会議あり」という発言です。
先週号で述べた「日本会議の生い立ち」から出来事を時系列で並べて、日本会議になる前に達成されたことも含めて見れば、いろいろとわかってくると思います。
紀元節復活(2月11日の建国記念日として制定)
元号法制化
自衛隊法改正
歴史教科書「新編日本史」の検定合格
大嘗祭の国家化(即位の礼)
国家国旗法(日本会議となってから成立)
この思想のベースとなるのが、憲法改正です。戦前の「天皇絶対の軍国主義国家」から「欧米型の民主主義国家」へ、現憲法によって国の理念が切り替えられました。戦前回帰路線の日本会議が、今の憲法を戦勝国側の「押し付け」としているのは、この部分から来ているのかもしれません。
対して護憲派は、日本を戦前社会に戻さないために、憲法改正に反対しているのかもしれませんね。ただ、地方道州制を導入するには、憲法改正が必要になります。憲法が新しい制度設計を縛っているところもあるという議論もあります。
9条の話は実にナイーブで、一部でも憲法改正を認めれば、いずれは9条改正にたどり着くという、「蟻の一穴」を護憲派は恐れているのでしょうかね。憲法学者の言葉ですが、法律は国民の行動を律するもので、憲法は法律を作る国会議員を律するものだと述べています。なるほどね。
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