近年、新たな偽札対策の一環として、中国が検討しているのが「国の中央銀行が主体となって『仮想通貨を発行する』」という案です。
噂によれば、ビットコインの取引は中国人が8割以上を占めているともいわれます。それは、中国国民が自国通貨に対して不安を抱いていることの表れです。
現在、中国以外にも英国、オランダ、カナダなど、仮想通貨の発行を目指している国は複数あります。確かに中国政府の関係者がいうように「マネーロンダリングや脱税対策にも効果を発揮する」という一面はあるでしょうが、ことはそれだけにはとどまりません。
実は「国が仮想通貨を発行したがる」ことの背景には、単なる貨幣の「電子マネー化」だけに限らない、より大きな目的が潜んでいるのです。(俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編)
プロフィール:俣野成敏(またのなるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、マネープランの実現にコミットしたマネースクールを共催。自らの経験を書にした『プロフェッショナルサラリーマン』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが10万部超えに。著作累計は44万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を3年連続で受賞している。
※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2017年1月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
もう後戻りはありえない。日本政府が仮想通貨を発行する日
仮想通貨はやっぱり「怪しい!?」
2016年、信販会社大手のジェーシービーが20代~60代の男女1000人を対象に仮想通貨に対する調査を行なったところ、約30%の人が「仮想通貨はよく分からない」と答えており、さらに「積極的に使いたい」と答えた人の割合は約10%にとどまっていることがわかりました。
比較的「新しもの好き」の20~30代だけで見た場合でも、使いたい人の割合は20%程度に過ぎず、どの年代でも「どちらかといえば使いたくない」「まったく使いたくない」と答えた人の合計が半数以上にのぼったことが明らかになっています。
上記の記事では、「いまだ仮想通貨に対する周知・理解は進んでいない実態が浮き彫りになった」といった調子で書かれています。記事の内容は「ビットコインを使いたい人って、まだこれしかいないんだ?」的な論調で書かれていますが、僕はむしろ「この時点で既に半数近くもの人が『使いたい』と思っている」という事実に驚きました。世の中は、まだほとんどの人がビットコインをひとつも持っていない状態だというのに、です。
このような状況の中で、「使いたい」と思ってる人が潜在的に半分近くいるというのはすごいことです。
もともとビットコイン自体は、デジタル通貨というよりは、金の仕組みに近いといえます。金は天然資源ですから、人間が勝手に生み出すことはできず、すでに地球上の75%は採掘済みだといわれています。金の価値は、金が「貴重=有限」だからこそ保たれているのです。無限にあれば、誰も欲しいとは思いません。
ビットコインも、金と同じく有限です。「電子通貨なのに?」と思われるかもしれませんが、ビットコインは誕生した時から2100万枚と発行予定枚数が決まっています。もともとの製作者はいますが、現在はその人の手を離れて、自動操縦になっています。2100万枚になったらそれ以上発行できないようにあらかじめプログラミングされていて、それがビットコインの価値を保つ役割を担っているのです。
かつて、紙幣はその価値を保証するために金で裏付けを行う必要がありました。これを金本位制といいますが、要は「この紙幣は、いつでも金と交換できます」という状態にすることです。そうしないと、基本的にはただの「紙」に過ぎない紙幣を、誰も信用してくれない可能性があったからです。
現在は、金に代わって国が貨幣の価値を保証しています。ところが今、人々の貨幣に対する信頼が揺らいでいます。
紙幣は有限に見えて、実際は無限に近いものです。中央銀行には、もともと「通貨の発行量を調整することによって通貨の価値を一定に保ち、物価の安定に努める」という役割があります。しかし今、通貨を発行したい欲求にかられた国家を抑制できている中央銀行はほとんど存在しません。
当然ですが、世の中に出回る貨幣が増えればその分、価値が下がります。それによって起こる一番わかりやすい例とは「物価上昇」でしょう。
たとえば百円ショップにいくと、以前は5本1パックだった電池が今は4本しか入っていなかったり、1個100円だったものが150円に値上がりしていたりと、量が少なくなっているか値上がりしているかのどちらかになっています。一見、同じに見える100円でも、買えるものが少なくなっている=価値が下がっているということの証です。
給料も上がらないのに、お金の価値が下がっていくということは、我々の資産が目減りすることを意味します。文頭のところでお伝えしたように、中国の方々がビットコインを好んで使う理由というのも、自分の資産を守ろうとしているからです。
ビットコインが、これだけ短期間のうちに急速に人々の間に広まっているのは、こうした時代的背景があるのです。
仮想通貨は身近な「金融革命」
ここまで、仮想通貨が急速に広まりつつある様子や、国家ですら仮想通貨に着目し、発行を検討している段階にあることをお伝えしました。
仮想通貨とは、電子マネーの一種です。主にインターネット等を通じて物品やサービスの対価として使用できるもので、現状は中央銀行などの公的な発行主体や管理者は存在していません。
2016年5月、参議院本会議で改正資金決済法が可決され、仮想通貨が決済手段として認められることになりました。これまでの仮想通貨はモノ扱いだったために、購入するに際しては消費税がかかっていましたが、今年(2017年)の7月より、消費税の課税対象から除外されることになっています。
当メルマガでは今週、来週の2週に渡り「仮想通貨」について取り上げます。
最近、ニュースなどで度々耳にする仮想通貨ですが、すでにSuica(スイカ)やWAON(ワオン)、Edy(エディ)など多くの電子マネーが存在する中にあって、なぜ仮想通貨だけがこれほど騒がれているのでしょう?仮想通貨は、他の電子マネーとどう違うのでしょうか?
仮想通貨について人々が知りたいこととは、「仮想通貨とは何か?」「仮想通貨によって、僕らの生活はどう変わっていくのか?」「仮想通貨とどう付き合っていけばいいのか?」といったことだと思います。
謎めいた印象のある仮想通貨ですが、本特集を通じて、その謎が少しでも解明され、あなたが仮想通貨に興味を持つきっかけとなるのであれば、嬉しく思います。
それでは、早速始めましょう。