消費税について考える際は、日本の競争力を削ぐことで得をする海外諸国の存在を無視できないと私は考えている。だが、日本の消費税で得する人たちは他にもいる。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)
一般市民に大きな負担をかける消費税、裏社会にはどんな恩恵が?
国民も国家も損をしている
消費税は、社会保障費の安定した財源だと見なされている。
ところが、日本の税収総額は消費税導入の翌年1990年がピークなので、必ずしも日本政府が得をしている訳ではない。おまけに同年からは税金を払わない赤字企業が急増し、また、消費税率を5%に引き上げた1997年からは経済規模そのものが縮小に向かうので、かえって社会保障費が嵩む事態となった。
それでも、政府は消費税率を10%に引き上げるとしているが、これでは、デス・スパイラルのイタチごっこだ。また、そうなれば消費税が日本政府の最大の財源となる見通しだ。
しかし、一体、それで誰が得すると言うのだろうか?下の参照グラフは税収の総額と内訳だが、近年の歳出は例年約100兆円あり、その差額が基礎的財政赤字となっている。
2016年度版の法人企業統計では、経常利益は前年度比9.9%増の74兆9872億円で過去最高だった。利益剰余金は7.5%増の406兆2348億円で、15年度の過去最高額を更新した。製造業・非製造業ともに増加した。
一方で、2016年度の国の一般会計の税収額が55.5兆円程度と、リーマン・ショックの影響を受けた2009年度以降で初めて前年度を下回ることが分かった。法人税収や所得税収が低迷した。
当初、財務省は16年度の税収について前年度を57.6兆円と見込んだが、法人税収が当初の想定の12.2兆円を下回る見込みになったことなどから、昨年末にいったん税収見通しを55.8兆円に下方修正し、1.7兆円の赤字国債の追加発行を余儀なくされていた。
企業収益が過去最高に増えても、法人税収はピーク時の3分の2でしかない。
私は日本経済を低迷させる主因となった消費税の導入や増税は、IMFなど海外からの提言だったので、日本の競争力を削ぐことで得する勢力(つまり、海外諸国)の圧力だと見ているが、日本の消費税で得する人たちは、他にもいた。
消費税で得をする金の密輸業者
金の密輸業者にとって、日本は急速に主力市場となっている。財務省によると、処分件数は2015年7月~16年6月、300件近くと過去最高だった。当局は氷山の一角とみる。密輸の輸入元はアジアの国・地域が多い。最多の香港と韓国で全体の4分の3程度を占め、シンガポール、台湾が続く。
日本では金の輸入時に消費税が課税され、課税額は国内で売買される際に買い手が消費税として支払う。輸入時の課税を回避できれば、密輸業者は消費税分の利益を得られる。14年4月に消費税率が5%から8%に上がったため、密輸は急増した。一般の市民にとって増税は負担が増しただけだが、金の密輸業者には「恩恵」となる。
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