今回は、税金特集の最終回をお送りします。前回の記事では、サラリーマンの節税対策として、損益通算を中心にお話してきました。本特集ではこれらを踏まえた上で、税金特集の総括を行いたいと思います。
前回に引き続き、ゲストには凄腕の会計士・税理士集団を率いる株式会社エニシコーポレーションの代表取締役社長・白井正俊(しらいまさとし)さんです。本特集も会話形式でお送りいたします。(俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編)
プロフィール:俣野成敏(またのなるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、マネープランの実現にコミットしたマネースクールを共催。自らの経験を書にした『プロフェッショナルサラリーマン』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが10万部超えに。著作累計は44万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を3年連続で受賞している。
※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2017年8月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。今なら本記事で割愛した全文もすぐ読めます。
働く人の税金対策(完) その領収書がサラリーマンの未来を変える
サラリーマンに忍び寄る“税包囲網”
サラリーマンは、基本的に経費計上は認められていません。なぜなら、サラリーマンは税金を計算する際に「みなし経費」という経費を一律で差し引かれているからです。
サラリーマンとて、会社で仕事をして、賃金を得るための費用を支払っています。たとえば服装代や自分で使っている事務用品、仕事のために読んでいる新聞図書費などです。ただ、これらの公私を分けたり、領収書をやり取りするのは大変なので、あらかじめ「これくらい使っているだろう」と思われる金額を「給与所得控除」として差し引いているワケです。
実際は、それ以外に「給与特定支出控除」という経費を付けることも可能です。しかしそれを使うには確定申告をしなければならず、また給与支払者からの証明書等が必要で、要は費用計上しにくくなっています。最近、高額所得者の所得控除枠が2016年、2017年と順次引き下げられ、より一段の負担増となっています。国の財政が厳しい現状では、ここまでお話した税制の構造上、サラリーマンへの課税が重くなるのは自然な流れでしょう。
国は近年、ますます所得控除の枠を狭める傾向にあります。一例を挙げると、2015年に相続税の控除枠が狭められた結果、特に都心に自宅を持つ多くの家庭で今後、相続税を支払わなければならない可能性が出てきています。
私たちはこうした状況を前にし、どのように対処すべきなのでしょうか?
1. サラリーマンが自分で自分の身を守る方法
最初に、これからの大増税時代を見据えて、今の私たちにできることは何があるのか?について考えてみたいと思います(以下、本文中について名前が出てこない限り同一話者、敬称略)。
なぜ、サラリーマンの手元にはお金が残らないのか?
俣野:では白井社長、今週もどうぞよろしくお願いします。今、国の財政が苦しい中で、まさにサラリーマンが税の狙い撃ちにあっているのが現状です。私たちは、これをどう迎え撃てばいいのでしょうか?
白井:もう「お上の言うことを聞いていれば、老後は面倒を見てくれる」「会社が何とかしてくれる」という時代ではなくなったということですよね。
少し私の話をしますと、私は自動車整備士として、社会人人生をスタートさせました。当時は私も「大手企業に入れば人生は安泰だ」と思っていて、それで日産自動車に入社しました。ところが入って数年も経たないうちに、会社が潰れかかってカルロス・ゴーン氏を社長に迎える事態となりました。私は「大企業の日産ですら、潰れそうになるのか」と衝撃を受けたものです。以来、自分がどの道に進むべきなのかを考え続けてきました。
サラリーマンをしている方は、毎月税金を給与天引きされていますよね? 私は最初、それを見て「損をしている」という印象を抱きました。けれど、毎月眺めているうちに「自分はこれだけの税金を納めている立場なのだから、この立場を何とか活かせないものだろうか?」と考えるようになりました。義務を果たす代わりに、日本国民としての権利をどうしたらもっと行使できるだろう?と思ったのが、税金会計に興味を持った始まりです。
残念ながら、1人が頑張っても法律は変えられません。だったら「1個人でもできることとは何なのか?」ということで始めたのがエニシコーポレーションという会社です。弊社のサービスをご利用いただいている会員の方には、税務処理を法に則り正しく申告する代わりに、国に対して権利を主張できる場としてご活用いただいています。
俣野:当メルマガ読者の方にも、お1人でできることがあれば、何かアドバイスをお願いいただけませんでしょうか?
白井:自分の将来を自分で考え、生きていくための手段として、ここ数年、注目されているのが副業です。サラリーマンの方はこれを活かして、前回お話した損益通算を行うことが、もっとも現実的な方法なのではないかと思います。
それでは、なぜ、副業という事業を行うことが節税につながるのかをお話しましょう。実は、サラリーマンの給与所得と、個人事業主としての事業所得との間には大きな違いがあります。それは以下の通りです。
《給与所得の場合》収入 ー 所得控除 ←ここに税金がかかり、残りが自分のお金となるが、ここからさらに家賃、車代、保険料などの必要経費を支払う
《事業所得の場合》収入 ー 必要経費 ←事業の場合は、先に経費を差し引いた利益に対して税金がかかる
サラリーマンの場合は、先に税金を差し引かれた上に、残った分からさらに必要経費を支払わなければいけません。ところが、事業の場合は先に必要経費を差し引いた後に税金がかかります。ですから、残った分は基本的に全部自分のものにできるのです。
俣野:一見、大差がないように見えて、実はこの差がとても大きいんですよね。
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