本日の書評は、人口減少に伴い生じるべくして生じた、「老いる家」の問題を論じた至って真面目な新書についてです。『空き家が15年後には2100万戸を超える……3戸に1戸が空き家に』本書の帯に書かれているセンセーショナルな言葉は決して人ごとではありません。(『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』姫野秀喜)
プロフィール:姫野秀喜(ひめの ひでき)
姫屋不動産コンサルティング(株)代表。1978年生まれ、福岡市出身。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で売上3,000億円超え企業の会計・経営計画策定などコンサルティングに従事。合間の不動産投資で資産1億円を達成し独立。年間100件以上行う現地調査の情報と高い問題解決力で、顧客ごとに戦略策定から実行までを一貫してサポートしている。
住宅過剰社会で「老いていく家」…日本の大問題を解説した良書!
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『老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路』
著:野澤千絵/刊:講談社現代新書
15年後には、3戸に1戸が空き家に
人口減少時代に突入した日本、人が老いるように、家も老います。家は老い、街は崩れます。『空き家が15年後には2100万戸を超える……3戸に1戸が空き家に』本書の帯に書かれているセンセーショナルな言葉は決して人ごとではありません。今自分たちが住んでいる街が、15年後にはインフラ不足の不便な場所に成り下がるかもしれない。阻止するためには、今手を打たなければ間に合わない。本書は人口減少に伴い生じるべくして生じた、老いる家の問題を論じた至って真面目な新書です。
- 人口が減っているのになぜ、新築が建てられるのか
- 郊外の田畑の真ん中に新築住宅が建てられるのはなぜか
- 老いていく家の引き起こす問題とはなにか
- これまでの都市計画・住宅政策の限界とこれからの方策とは
こういった観点で、社会問題化しつつある住宅過剰供給に対する問題提起をしています。
著者である野澤氏は東洋大学理工学部建築学科の教授を務めている方なためか、新書といってもゴリゴリの歯ごたえある読み口となっています。
少々小難しいので、誤解を恐れず要約します。
本書の主張
「人口減ってるから、ある程度のエリアにまとまって住まないと、社会インフラ(ライフラインや道路や学校などの公共施設)とかが維持できず、生活レベルが下がるよ~」
「自分の町の人口を増やしたいからといって、畑の真ん中に住宅建てても、隣の町から人口を奪い合ってるだけだよ~」
「儲かるからって畑の真ん中に家を建てて売るのは、社会全体で見たらインフラの非効率を招く行為だよ~」
「今まで都市計画では、こういう問題に対処できなかったけど、これからはちゃんと音頭とって対処しないと税金のムダ遣いが減らないよ~」
という感じです。
ライフラインや道路などは、市場の失敗に陥るからこそ、公共財として供給されます。都市計画によりその公共財のための予算や分配が影響を受けるのだとすれば、当然、住宅供給量や場所を制限するのも公共政策の務めとなるわけです。
普段あまり考えることもない都市計画における失敗とこれからの住宅のあり方について、本書のエッセンスを見ていきたいと思います。
以下、著者の言葉を抜粋します。
『』内は引用です。
人口が減っているのになぜ、新築が建てられるのか?
【答え】
- 業者は『売れるから建てる』
- 買う人は『「住宅は資産」と考え』『住宅ローン減税といった優遇措置』があるから買う
結果、買う人がいるから作って売るわけです。