トリニティ(三位一体)に支配された安倍政権
グローバリズムとは、規制緩和、自由貿易、そして緊縮財政の3つが、常に政策パッケージとして推進されます。すなわち、グローバリズムのトリニティ(三位一体)です。
安倍政権は、グローバリズム政権です。大本の「考え方」がグローバリズムである以上、規制緩和と自由貿易、さらには緊縮財政の3つを「常に」推進せざるを得ません。
とはいえ、現実の政治は「デフレ脱却」「地方経済再生」を求めてきます。もっとも、安倍政権はグローバリズムのトリニティ」に支配されている以上、財政出動といったデフレ対策に乗り出すことはできません。
ちなみに、グローバリズムのトリニティはすべてデフレ化政策です。
でっち上げられた地方創生策
というわけで、安倍政権はデフレ化政策のグローバリズムを推進しつつ、金融緩和でデフレ脱却を図るという「いわゆるリフレ派」式のデフレ対策を実施し、見事に失敗しました。
地方経済再生も同じです。本来、地方創生策として推進するべきは、交通インフラの整備であり、他にはありません。とはいえ、トリニティに含まれる緊縮財政を推進している安倍政権にとって、公共投資の拡大などできるはずもないのです。
実際、地方創生策のペーパーを読むと、インフラ整備の「いの字」すらありません。トリニティに支配された安倍政権は、交通インフラの整備という正しい地方創生策は実行に移せない(もちろん、交通インフラの整備はデフレ対策としても有効です)。とはいえ、現実の政治は地方経済の再生を求めてくる。
安倍政権は、グローバリズムのトリニティを崩さない形の地方創生策を「でっち上げる」必要があったのです。
「自己責任」で切り捨てられる地方
でっち上げられた地方創生策は、当たり前ですが、「各地方は自助努力せよ。 稼げているところは地方交付税を厚くし、うまくいかないところは自己責任」と、各地方の競争を煽るという、「政府の責任放棄」的なものにならざるを得ませんでした。
初代地方創生大臣である石破茂、2代目の山本幸三。両者が共に地方の競争を煽る発言を繰り返し、「負けたところは自己責任」と、切り捨てに走ろうとするのは偶然ではないのです。
トリニティに支配された安倍政権には、はじめからまともな地方創生策など打ち出しようがないのでございます。すなわち、何かと問題がある(と私は感じる)山本幸三が地方創生大臣であるのは、偶然ではないのです。
「政府の責任放棄」「地方の自己責任」式の地方創生を進める以上、地方創生大臣山本幸三は、むしろ「適材適所」という話になってしまうのでございます。
『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年7月30日, 31日号より
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