安倍政権の支持率低下が止まりません。先日行われた時事通信社の調査ではついに30%を割り込む事態に。これを重く見たのか、官邸は加計学園問題を巡る閉会中審査に安倍首相本人の出席を決めるなど、失った回復信頼に躍起となっています。しかしメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』の著者でジャーナリストの高野孟さんは、「これは首相にとって大きな賭けで、失敗すればいきなりの内閣総辞職もありうる」とし、内閣改造も政権再浮上のきっかけにならないと指摘。さらにアベノミクス総括や改憲問題等々、安倍首相を取り巻く環境は厳しさを増す一方との見方を示しています。
即死か頓死か。永田町で囁かれだした安部内閣総辞職の先を読む
頼みの支持率に赤信号
政界一寸先は闇という永田町の格言はあまりにも知れ渡っていて陳腐とさえ言えるのだが、本当にそうだと実感することも少なくない。
今がまさにその時で、通常国会会期末の共謀罪法案強行と加計学園疑惑への「聞く耳持たず」の粗暴な対応、それに重なって一連の安倍チルドレンの日本語不全の不祥事や加計学園による下村博文=元文科相への隠れ献金発覚などが続く中での東京都議選の大惨敗によって、何やら呪縛が解けたかのように内閣支持率が急落した。
- 36% (読売)
- 35% (NHK)
- 33% (朝日)
- 32% (日本TV系)
- 29.9%(時事)
――と、安倍政権の前途に暗雲が一気に垂れ込めてきた気配である。一般に、30%台前半で黄色信号の「危険水域」、20%台に入ると赤の点滅で、いつ倒れてもおかしくない状態になって、余程のことがない限り支持率回復は難しいと言われる。2007年の第1次安倍内閣末期では、相次ぐ閣僚スキャンダルで複数の調査で支持率が30%ラインを切る中、7月参院選で自民大敗、8月の党人事・内閣改造も「人心一新」効果は薄く、結局9月臨時国会が始まって早々に総辞職した。その状態に近づいているということである。
まずは加計学園疑惑を打ち止めに?
野党も国民世論も蹴散らすようにして強気一本の政権運営を貫いてきただけに、ひとたび弱気を出すとすべてが噛み合わなくなって、悪い方へと傾きかねないのが安倍政権である。
7月10日に加計学園疑惑での閉会中審査に応じたこと自体が、「一歩後退」の始まりだった。しかしまだこの時には、安倍首相がG20サミットの後、大した案件もない北欧3国を昭恵夫人と手を繋いで歴訪している期間中にわざと日程を設定することによって、「安倍自身は疑惑とは関係がなく、だから、ほら、このように妻と一緒に北欧をのんびり旅行しているんですよ」と「印象操作」をするだけのゆとりがあった。
ところがその閉会中審査は前川喜平=前文科次官の完勝。何も隠すことがなく嘘をつく必要もない前川が堂々としているのは当たり前で、それにひきかえ菅義偉官房長官はじめ政府側はひらすらコソコソして逃げるばかりで、疑惑はかえって深まってしまった。11日付朝日の調査結果では、最近の安倍首相の発言や振る舞いをみて、安倍首相のことを「まったく信用できない」21%、「あまり信用できない」40%で、合わせて61%となり、さらに加計学園問題の真相解明について安倍政権の姿勢を「評価しない」が74%にも達した。
逃げられないと見た安倍首相は、24日の週に第2回の閉会中審査を開催して自らが出席して答弁することを決意した。もちろんそれは、自分が出ることでこの疑惑にケリをつけて、これ以上の野党やマスコミの追及を断ち切ろうという狙いからのことだが、果たして成功するのかどうか。安倍首相が答弁に失敗すれば、官邸工作の中心人物と前川から名指されている和泉洋人=首相補佐官や、警察に前川の尾行調査をさせて人格攻撃で陥れようとした張本人である杉田和博=官房副長官らの喚問ないし参考人招致に発展して、収拾がつかない事態に発展していくかもしれない。安倍首相にとってこれは大きな賭で、失敗すれば、極端な話、いきなりの内閣総辞職もあり得ないではない。
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