記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年7月12日号より
※本記事の太字はMONEY VOICE編集部によるものです
『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017/07/12号より
7月2日に行われた東京都議会議員選挙は、都民ファーストが完勝する一方、自民党が歴史的・壊滅的敗北を喫する結果となりました。
なにせ選挙後の同党の議席は23。
選挙前の57議席の4割(!)、
従来の最低だった38議席に比べても6割しかありません。
まさに衝撃的。
敗因としては、強引な政権運営で国民の不満や不信が高まったところに、
自民党の政治家の失言や暴言、あるいはスキャンダルが相次いだことが挙げられていますが、
ここでは6月27日、稲田朋美防衛大臣がやらかした大失言を取り上げましょう。
(※)不満や不信が高まった背景には、あいかわらずデフレ脱却ができていないこともあると思われるものの、これは脇に置きます。
板橋区で開かれた集会の応援演説で、自民党公認候補への投票について
「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いをしたい」
と言ってしまったアレですよ。
さて。
『新訳 フランス革命の省察』の第十章には、「自治体と軍の危険な結びつき」という節があります。
http://amzn.to/1jLBOcj(紙版)
http://amzn.to/19bYio8(電子版)
革命によって社会秩序が根底から揺らぎ、自治体同士の関係まで不安定になった結果、
自治体が軍に頼ったり、逆に軍の指揮権を欲しがったりする傾向が台頭したことを指摘したもの。
でなければ自衛できないからです。
エドマンド・バークいわく。
軍と自治体の関係は次の三つのどれかとなる。
自治体が軍を支配するか、軍が自治体を支配するか、はたまた両者が結託するかだ。
あるときは相手を支配し、あるときは支配されるというふうに、立場がコロコロ変化することも起こるだろう。
また状況次第では、三つの立場がゴチャマゼになることも考えられる。
(257~258ページ)
片や稲田防相は、応援演説でこう発言。
しっかりと、その、えー、活躍を、自衛隊ができるというのも、
地元の皆様方、そして都民の皆様方の協力があって、
初めてしっかりと連携があるということが、私は重要だと思っておりますので、
防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いをしたい。
https://search.yahoo.co.jp/video/search?p=稲田大臣+応援演説&tid=4d46615502cd3440326e825b05954e5c&ei=UTF-8&rkf=2&dd=1
(※)音声から判断して、3行目と4行目の間に中略箇所があります。
防相は同日夜に発言を撤回、30日の閣議後記者会見でもあらためて撤回と謝罪を表明しましたが、辞任は否定しました。
次の内閣改造では交代の可能性が高いと伝えられるものの、現時点では続投しています。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/07/06/naikaku-kaizou_n_17413234.html
ちなみに30日の会見では、「誤解」という言葉がなんと35回も飛び出したとか。
「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いをしたい」と言いはしたものの、
「防衛省、自衛隊、防衛大臣としてお願いするという意図」は全くなかったのだから、
「防衛省、自衛隊、防衛大臣として投票を呼びかけた」と受け取るのは誤解なのだそうです。
https://newspass.jp/a/b9jd1
素晴らしくワケワカというか、認知的不協和丸出しの感もありますが、
この発言、撤回や謝罪だけでは済まされないのではないでしょうか。