実は急落していた政権支持率と産経新聞のミスリード
高かった支持率(政権発足当時は80%台)が、森友問題以来、50%を割って急落しています。各新聞の読者に訊ねる方法ですから、支持率は新聞によって、かつてない大差があります。
以下、主要新聞の、17年6月1日、18日での、安倍政権支持と非支持を示します。なお、都議選前だったので、このデータの対象は東京都で、全国ではありません。産経新聞の異常に高い支持率も、安倍首相の判断を狂わせた一因でしょう。
新聞社/安倍政権支持/不支持
産経新聞/86%/5%
読売新聞/43%/29%
日経新聞/41%/38%
朝日新聞/14%/70%
毎日新聞/9%/55%
東京新聞/5%/77%
産経新聞の86%の支持は驚きですが、東京新聞の支持5%と不支持77%は、もっとびっくりします。朝日新聞の支持14%、不支持70%も驚愕です。自民党寄りですが、財界の立場からは中間的なのが日経新聞です。
それにしても全部の新聞は、世論調査の方法を変えないと、それこそ「国民から愛想」を尽かされます。新聞社間の差が、考えられないくらい大きすぎるからです。「国民の世論調査」とは言えない結果です。これは新聞の購読数が減っている原因でもあるでしょう。
(注)政治的には第4の権力を持つ新聞は、反省やお詫びとは無縁です。「調査結果は変だ」という感覚がないのでしょうか。あるいは、「分からない」と答えたとき、それでも「どちらからといえば支持ですか?(あるいは不支持ですか?)」と、二度質問する「誘導」があるのか。読売新聞はこれを行っています。
しかしこれも、過去との比較で見ると分かります。同じ読者層である読売新聞の調査結果を比較すると、森友問題の前の内閣支持率は66%でした。それが加計問題の後は43%ですから、23%下がっています。読売での支持率43%は「政権維持の危機ライン」だったのです。
都民の支持率30%割れ、それは自民の危機ラインだった
なぜならこの時点で、都民の支持率では、すでに30%を割っていたと予想できるからです。豊田議員による暴言のICレコーダーが報道された後は20%台だったでしょう。
小選挙区の二大政党の場合、政権与党の支持率で30%を割ると、政権の転覆が起こります。
都議選の得票率では、自民が22.5%でした。東京では自民支持が全国より10ポイントくらい低いので、全国選挙の場合は32%くらいになるでしょう。かつての52%からは20%減らしたことになります。
現在の衆議院で95議席を擁し、自民の291議席に次ぐ第2党の民進党が惨敗する中での、この自民支持率の低さは、異常な事態と見なければならないでしょう。なお、第3党の公明党で、衆議院の議員数は35名です。
公明票が消えれば、全国で自民党議員100人落選も
今回の結果をもたらした重要な要素として、公明党が都民ファーストと組んだことがあります。公明党が、自民議員の当落を左右する「キャスティング・ボート」を握っていることも、この都議選で明確になりました。
東京都での公明党の基礎票は最近少し減っていますが、それでも80万票、全国では700万票台。投票率は高いので、50%の投票率のときは、これが2倍のパワーになります。
全国で公明票がなくなると、自民党議員のうち100人が落選と予想されています。各選挙区にごとに2万~2万5000票だからです。自民にとって、公明党との連立は政権維持の生命線です。
過去、安倍政権の支持率は、読売新聞での55%台から45%台に低下しても、その後は戻っていました。しかし今回は、この先、北朝鮮問題くらいしか支持率が戻る要素は見当たりません。