日経平均株価は9月27日以降、新たな上昇の流れへ入り、年内に19000円を目指している可能性が出てきた。しかし少額の投資は、大きなシナリオに乗って、それが当たれば大きな利益が得られるというやり方でしか勝てない。(『少額投資家のための売買戦略』伊藤智洋)
プロフィール:伊藤智洋(いとうとしひろ)
証券会社、商品先物調査会社のテクニカルアナリストを経て、1996年に投資情報サービス設立。株や商品先物への投資活動を通じて、テクニカル分析の有効性についての記事を執筆。MS-DOS時代からの徹底したデータ分析により、さまざまな投資対象の値動きの本質を暴く。『チャートの救急箱』(投資レーダー社)、『FX・株・先物チャートの新法則[パワートレンド編]』(東洋経済新報社)など著書多数。
※本記事は有料メルマガ『少額投資家のための売買戦略』2016年10月23日号の前書きを一部抜粋したものです。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。
9/30の夜間先物を「買えた人」と「買えなかった人」の差とは?
政治と相場の共通点
今回の米大統領選でのトランプ氏への支持率の推移は、人の愚かしさをよくあらわしている。
大統領候補を選出する時点では、現在の米国の現状を変えたいという中・長期的な視点で、最も変化させてくれる可能性のある候補として、言いたいことを言い、誰からも借りを作らず、自らの思いで積極的に行動してくれる人を選択した。
しかし、いざ、最終投票が間近になると、中・長期的な視野での考えなど吹き飛び、目先のスキャンダルな話題によって、コロッと考えが変わってしまう。
トランプ氏は、視野の狭い、お下劣な人であることなど、誰もがわかっていたはずである。
言いたいことを言う性格は、思慮深くない、単純で、欲望の強い人の裏返しである。しかし、自分の力で財をなした行動力と、強い信念があるからこそ、米国の現状を変えてくれると判断したはずである。
時間を経過すれば、冷静になって、再び、中・長期的な視野で候補を選ぶことになるが、それまでの時間を作らせない絶好の場所で、今回のトランプ氏の10年前のわいせつ発言がリークされた。
日本の選挙期間は、候補者の実績を周知するには短すぎるが、1年以上もかけて選挙活動を行っても、投票前の政策と関係ない話題で投票行動が変化してしまうなら、期間に意味がないようにも感じてしまう。
日経平均1万9,000円
相場では、この一瞬の考え方の変化が、その後の勝敗に大きく影響する。日経平均株価は、9月27日以降、新たな上昇の流れへ入り、年内に19000円を目指している可能性が出てきた。
前回、9月30日の夜間取引で仕掛けられるか否かは、大勢が上昇の流れへ入っていることを信じられるかどうかで決まると書いた。
9月30日の夜間に先物を仕掛けているなら、10月11日の時点では、500円幅以上の利益になっているはずである。ラージ1枚、75万円の投資で、50万円の利益が出ていることになる。
10月11日は、500円幅の利益を出してニンマリだが、その翌日から価格が反転して下げている。13日には、16800円を割れる程度まで下げている。少しでも利益を残したいという気持ちが出れば、いてもたってもいられなくなってくるだろう。17156円の戻り高値を前に上値を抑えられているので、もしかしたらという気持ちになる。
ここで、長期的な視点のまま、最初に投資したときの予想を信じることができるなら、かりに価格が下げても、7月21日以降の下値を切り上げるジグザグの中の動きに過ぎないため、どんなに下げても買値付近で再度上昇を開始するはずだから、持玉を維持しようという判断になる。
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