日本の「対中直接投資」と「対中輸入拡大」の組み合わせは、国内の雇用を奪い、国民の所得を引き下げ、デフレを長期化させるという最悪のパッケージだった。(『週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』三橋貴明)
※本記事は、『週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』 2016年10月8日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
国内の雇用を奪い、国民の所得を引き下げ、デフレを長期化
国民経済に「二重の被害」
対外直接投資とは、要するに「雇用の場を国内から外国に移す」ことである。工場などの資本が外国に移ると、当然ながら国内から雇用が失われる。
さらに、外国からの製品輸入とは、国内総生産であるGDPの控除項目になる。外国からの輸入が増えれば増えるほど、GDPは減る。すなわち、国内の「所得」が縮小してしまう。
それでは、対外直接投資と製品輸入の組み合わせはどうだろうか。つまりは、「国内の市場で消費される製品を生産するために、外国に工場を移転する」というケースである。
上記のケースは、国内で雇用が減ると同時に、輸入増で国民の所得が減少する。雇用が減れば、所得が減るのは当たり前なのだが、同時に「輸入増」によりGDPが削られるという点がポイントである。
例えば、対外直接投資の目的が「日本以外の国々への輸出拡大」というケースもあるわけだ。その場合、確かに雇用は失われるが、輸入増による所得縮小は起きない。
あるいは逆に、輸入が増えたとしても、旺盛な国内需要が満たされるだけで、雇用は失われないというケースもあり得るわけだ。
ところが、対外直接投資で日本国外に工場を移し、さらに外国の日系工場で作られた製品を日本に逆輸入するとなると、国民経済としては二重の被害を受けることになる。しかも、国内需要が「旺盛ではない」デフレ期にこの組み合わせを推進されると、最悪だ。
まさに、日本の対中直接投資がそうだったのである。
図の通り、日本の対中直接投資は、80年代まではゼロに等しい有様だった。その後、二十一世紀に入って以降に、本格的に増えていき、何と東日本大震災が発生した2011年には、年間100億ドル(約1兆円)を上回ってしまった。
これはもちろん、震災を受けて日本企業が生産拠点を日本国から「脱出」させたためなのだが、それにしても2000年以降の対中直接投資の急増には驚かされる。
生産拠点が中国に移ると同時に、日本は対中輸入、すなわち中国からの輸入を増やしていった。中国に生産拠点が移り、中国人民の労働により生産された生産物が、日本へと輸出されていったのである。
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