記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年10月4日号より
※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです
1月解散が囁かれる中、政府による追加経済対策が急務に
まずは第二次補正予算、11日に成立へ
先週から臨時国会がはじまりました。この国会では様々な議題が議論される予定ですが、中でも重要なのが、「デフレからの脱出速度」を確保するための「第二次補正予算」の議論です。
http://www.sankei.com/politics/news/160718/plt1607180024-n1.html
国会の皆様方には是非とも、より強力かつ効果的に「脱出速度」が確保できる補正予算を議論いただきたいと思います。
そんな中、今、政府から提出されている補正予算案は、約3.3兆円。
http://jp.reuters.com/article/japanese-budjet-idJPKCN10Z0SN
この「3.3兆円」という「補正予算」が「大型景気対策」と呼べるかどうかと言われれば、例えば安倍内閣誕生時に決定した平成24年度補正予算額「13.1兆円」に比べると、かなりの差があると言わざるを得ません。
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2012/sy250115/hosei250115c.pdf
もちろん、今回の「経済対策」は、この「第二次補正予算」だけでなく、リニア前倒し等のための「3.6兆円の財政投融資」もあり、また低金利のため国債利払い費が不要になっているため見かけ上補正予算が圧縮しているように見える――という諸点はありますが、今、見込まれている補正や財投「だけ」で「デフレからの脱出速度」の確保はできません。
つまり、今回の補正予算の議論は、デフレ脱却のために「必須」な「必要条件」であるものの、それ「だけ」で満足できる「十分条件」とは言えないのです。
「前倒し執行」がなければゼロ成長
そもそも政府は今年度当初、経済対策として大規模な「予算の前倒し執行」を行っています。
http://mainichi.jp/articles/20160405/k00/00e/010/166000c
つまり政府は、公共投資等の本年度予算の「8割」を、今年の前半期で執行することを通して、今年の前半期4月~9月までの景気を刺激する対策を行ったのです。
例えば、公共事業関係費は今年度「6兆円」でしたから、今年の前半期だけでそのおおよそ8割の「4.8兆円」程度を執行したことになります。通常に執行していれば6兆円の半分の3兆円ですから、「差し引き1.8兆円分の公共投資拡大」を行った事になります。
そしてそのおかげで、民間の消費や投資がふるわなかった4-6月期はマイナス成長に陥る事なく、なんとかプラス成長することができたのです。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL07H77_X00C16A9000000/
しかし、これを逆に言うなら、もしも「前倒し執行」がなければゼロ成長、最悪の場合にはマイナス成長になっていた可能性があったのです。