記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年6月3日号より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです
一民間人が自社の利益最大化を狙い、日本の政策を決定する異常性
パソナグループ取締役会長の竹中平蔵氏
本日は、ザ・レントシーカー、政商の中の政商、偉大なる竹中平蔵氏のお話。財務省という組織を除くと、竹中氏ほど日本のデフレ長期化に「貢献」した人物はいません。
特に、決定的だったのは、竹中氏が、小泉政権期に、
- プライマリーバランス黒字化
- 平均概念の潜在GDP
- 発展途上国型マクロ経済モデル(IMFモデル)
と、デフレを長期化させざるを得ない三つの「指標変更」を行ったことです。
そもそも、財政健全化の定義は「政府の負債対GDP比率の引き下げ」であるにも関わらず、政府の負債対GDP比率の決定要因の一つに過ぎないPBを目標に設定。結果、我が国は、「(国債関係費以外の)歳出を増やすためには、他の予算を削るか、増税するしかない」という状況に追い込まれ、デフレ脱却の財政出動が不可能になってしまいます。
さらに、高齢化で社会保障支出が増えることを受け、そもそもデフレ化を引き起こした元凶である消費税増税を、2014年に再び断行。案の定、2016年以降、日本は再デフレ化の道をたどっています。
また、最大概念の潜在GDPを平均概念に変えたことで、デフレギャップが「小さく見える」状況になりました。加えて、インフレギャップが「視える」という奇妙な状況になります。
図の通り、バブル期やリーマンショック前など、日本の需給ギャップがプラス化しています。インフレギャップが数値で測定できる。つまりは、「日本経済は潜在GDPを超す生産を行い、需要された」という話になってしまうのです。
潜在GDPは、「日本経済に可能な最大の生産」ですから、インフレギャップが視えるということは、「生産されないものが、需要された」ことを意味します。
生産されないモノやサービスに、消費や投資として支出がされるとは、これいかに?
要するに、平均概念の潜在GDPは、実際には「潜在」GDPでも何でもないという話です。
潜在GDPの定義が最大概念から平均概念に変えられたことで、需給ギャップのマイナス(デフレギャップ)が小さく見えるようになり、デフレ対策が打たれにくくなりました。ついでに、完全雇用の失業率も上昇。日銀の定義では、完全雇用失業率は何と3.5%。今は、完全雇用を超える完全雇用という話になってしまいます。なんのこっちゃ。
PB目標、平均概念潜在GDPに加え、マクロ経済モデルを需要牽引型ではなく、発展途上国向けのIMFモデルに変更され、我が国のデフレは長期化することになりました。
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