第3のカード「原油相場」~OPEC減産合意だけでは安心できない?
そして第3が原油相場です。
原油需給は明らかに供給過剰で、OPEC、非OPECともに増産を続けています。多くの産油国が過去最高水準の生産をしているところで、増産凍結を決めても、すでにある供給過剰は解消できません。
それでも、IEA(国際エネルギー機関)などは、増産凍結の可能性や、需給改善を期待させるメッセージを発し、価格を支えてきました。
このIEAなどは米国の石油メジャーの息のかかった組織で、石油業界寄りのバイアスがかかるとともに、政治ともつながりがあります。
これまでも彼らと政治がリンクして原油価格を大きく動かし、操作してきました。時にロシアの経済力をそぐためといった政治要因によっても動きます。
現在、アルジェリアで国際エネルギー・フォーラムが開催されています。そしてその合間にOPECメンバーなどで生産量の調整が論議されています。
市場を混乱させたい筋にすれば、50ドルくらいまで価格を吊り上げておいて、「凍結合意に至らず」とすれば、原油相場を崩すことができます。在庫統計に手を加えることも容易です。
※編注:28日のWTI原油先物は、国際エネルギー・フォーラムで原油減産が大筋で合意されたとの報道により大幅反発。一方で、実際の需給改善効果は小さいとする見方も出ている。
OPECは28日の非公式会合で、加盟国の生産量の上限を日量3250万バレルに制限する協定を結んだと米メディアなどが報じた。会合は無風に終わるとの思惑から原油の売り持ち高を積み増していた投資家らが、損失覚悟の買いを入れたことで相場上昇が加速。11月物は一時は47.45ドルと期近物として8日以来ほぼ3週ぶりの高値を付けた。
ただ、市場では「OPECの生産制限は現状の生産枠とほぼ同水準で、需給改善にはつながらない」(オッペンハイマーのファデル・ゲート氏)との指摘があった。
大きな下げ余地
米国の株価も債券相場も、かなり高値圏にあり、頭が重くなっているだけに、何らかのショックをきっかけに、大きく下げる余地が大きくなっています。
これと米大統領選挙のヤマ場とが重なるだけに、これからしばらくは、政治サイドからの相場かく乱に注意が必要となります。
『マンさんの経済あらかると』(2016年9月28日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。