FRBは利上げによる株価急落を非常に気にしているようです。しかし20・21日のFOMCでの利上げの可能性は意外に高いと考えています。折しも16日にはドイツ銀行の株価が1日で9.3%も急落したばかり。このようなタイミングで金融政策決定会合があるとはまさに皮肉ですね。日銀が株価下落のトリガーを引いてくれるのか、非常に見ものです。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて)
本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2016年9月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した全文もすぐ読めます。
プロフィール:江守 哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。
ドイツ銀行株が急落。そして米国株が最も下げやすい週が始まった
今週、FRBが懸念する市場崩壊は起こるか?
いよいよ重要な週になりました。20・21日はFOMCです。利上げがあるのか、見送られるのか。市場はこの決定に注目しています。
しかし、繰り返すように、結果を待つしかありません。結果をあらかじめ予想して、それに対してポジションを持つことは、あまり賢明でありません。これはいつも繰り返し述べていることです。
巨額の資金を運用するヘッジファンドや機関投資家は、イベントごとにポジションを調整するのは不可能ですが、個人投資家はこれができます。機動的に動くことができる個人投資家の方が有利な時は最近は増えているように思います。
それにしても、最近の市場関係者や投資家は、FRB関係者の発言や金融政策の動向に、あまりに過敏に反応しすぎているように思います。これはFRBも同じです。市場動向を気にしすぎていることで、利上げが遅れている可能性があるからです。
雇用はすでに十分すぎるほど回復しています。完全雇用状態にあるというのが、市場のコンセンサスになっています。
また、懸念されていたインフレについても、16日に発表されたCPIはコアベースで前年比2.3%の上昇となっており、水準自体はすぐにでも利上げできる状況です。
このように、実際には利上げはいつでもできる、むしろすぐにでもしておいた方がよい状態になっています。しかし、FRBは利上げによる株価急落を非常に気にしているようです。さらに言えば、世界的な低金利状態による米国債への過剰投資の巻き戻しを恐れているともいえます。
手だてが遅れたことによる、今後の市場崩壊リスクの増大に戦々恐々としているわけです。
日本と欧州の中銀による量的緩和策の継続とマイナス金利の導入で、世界的な低金利状態が加速しました。これが「低金利バブル」を作り出しています。
時限爆弾のスイッチはすでにオンの状態
最近になって、これまでの低金利と過剰な債券への投資に警笛を鳴らす声が多くなり始めました。
残念ながら、多くの投資家はすでに大量の債券投資を行っており、金利上昇に耐えられない状況を自ら作ってしまいました。
したがって、金利が上昇し始めると、世界の多くの投資家は耐えられなくなり、債券ポジションの解消に走らざるを得なくなります。これがさらに金利上昇を招くという、まさに負のスパイラルを引き起こします。
こうなると、債券の代替として買われてきた、高配当株や公共株も暴落せざるを得ません。これまでこれらの株式を購入してきた背景が180度変わってしますのですから、機械的な売りが出てきます。
このバブルの崩壊による市場への影響は甚大なものになることは確実とみています。
時限爆弾のスイッチはすでにオンの状態になっています。あとは、爆発までの時間がどの程度にセットされているかだけです。
もしかすると、FRBがあえて利上げというトリガーを引いて、想定よりも少し早く爆発するかもしれません。