記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年9月16日号より
※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです
豊洲の汚染地下水問題、本当に地下空間は“悪”なのか?
地下室が安全に寄与する可能性
豊洲の土壌汚染対策の「盛土」について、様々に報道されています。これまでの説明がウソだった、汚染対策が徹底していなかった、というトーンで報道されています。
(例えば、http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2016_0914_2.html)
これまでの説明と現状との乖離があったのか否か等については、事実関係を確認する必要がありますし、「地下室にたまっている水」については、施工管理がどうなっていたのかを確認する必要がありますが、
「建物の衛生・安全性」
の視点から、
A)地下室を造った今回のケース(地下室有りケース)
と
B)地下室を造らず、直接、建物を盛土の上に造ったケース(盛土上建設ケース)
を比較すれば、「あくまでも一般論」としては、A)「地下室有りケース」の方が、B)「盛り土上建物ケース」よりも「衛生的」である可能性は十二分にあるように思われます。
というのも、そもそも、建築物を建てるときには「基礎杭」をうつのですが、その基礎杭にそって、(毛細管現象によって)盛土下の地下水が建築物下に上がってくることは想定範囲内の事実です。そしてそこまで上がってきた地下水は、コンクリート壁の打ち継ぎ目の目地や壁そのものに存在する小さな割れ目などを通って、建物内にも浸入することは避けられません。つまり、「地下室有りケース」のみならず、「盛り土上建物ケース」でも、基礎杭を打つ以上は、地下水が建物内に侵入することは不可避なのです。
したがって、そういう建物のところまで昇ってきた地下水をくみ上げる排水システムは、いずれのケースでも必須なのです。
この時、A)「地下室有りケース」の場合には(排水システムが適正である限り)、(市場で活用される)地上階に、地下水が浸入する可能性はほぼゼロになりますが、B)「盛り土上建物ケース」においては、(市場で活用される)地上階に、地下水が直接浸入する危険性があるのです!
逆に言うなら、A)「地下室有りケース」の場合には、その地下室のおかげで、地下水と、地上階の市場施設を「遮断」することが可能となるのです!
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