とどめを刺した米連銀
そして、支払利息の延滞や、支払い不能を加速度的に後押ししたのが米連銀だった。
利上げは住宅バブルを鎮静化させるためだったのかも知れない。しかし、ほぼ飽和状態になっていた市場で、需要の先食いのみならず、名義貸しという架空の需要までつくって膨らませたバブルが、鎮静化などという穏やかな状態で終えるはずがない。また、利上げのペースも、連銀の真意を測りかねるくらい急激なものだった。
案の定と言っていいほどに、バブルは崩壊し、米金融市場空前の低金利でもリーマン・ショックにつながった。未曽有の金融危機となったのだ。
サブプライム危機の再来はあるか?2016年現在の危険な兆候
リーマン・ショックからほぼ丸8年後の2016年9月13日、米国勢調査局は、2015年の家計収入の中央値が前年比5.2%増の5万6500ドルと2007年以降で最大となったと発表した。伸び率は1968年の統計開始後で最大だった。
貧困層は2014年から350万人減の4310万人となり、貧困率を14.8%から13.5%に大きく引き下げた。下げ率は1999年以降で最大。また、医療保険未加入者が3300万人から2900万人に減少、加入比率は89.6%から91.4%に上昇、過去最大となった。2010年には4860万人、約16%が未加入だった。オバマケアの成果だとされる。
米連銀のバランスシートは、金融危機への対応そのままの規模を維持している。政策金利も0.25%と、利上げしたとはいえ、依然としてほぼ史上最低水準のままだ。雇用は完全回復、所得も回復した。
一方で、景気拡大期はいつ失速してもおかしくないくらいに長く伸びている。そこに、米国は新大統領を迎えるのだ。
サブプライム・ショックを学んで分かるのは、リーマン並みのショックは、システマティックなリスクから起こり得るということだ。とすれば、地政学的リスクやブレグジットなどよりも、マイナス金利政策のようなもののほうが恐いということになる。
米国内では、米新車販売台数は過去6年間伸び続けてきた。その要因は、雇用回復に加えて、低金利、ガソリン価格の低下、インセンティブによる値引き、新車リースのための業者による購入増などだ。
消費者は新車を2年間などリースすると、自動車ローンを組んで購入するよりも1カ月当たりの出費が抑えられる。8月の時点では、新車販売におけるリース比率が32%にもなったようだ。その販売台数が、このところ伸び悩んできた。
ここで金利が上がると、自動車ローンの金利も、リース料も上がることになる。大きな不安材料だ。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2016年9月18日)
※太字はMONEY VOICE編集部による
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